[ Main Page ]

卵とインフルエンザワクチン

インフルエンザについてはかなり知れ渡っているようだけれど、ワクチンの作り方については、 あまり知られていないようなので、載せてみました。かなり古い文献(メディカルカルチュア?)からなので 古い内容もありますが、いまだに(2009年現在)日本では細胞培養方式では作っていないので、 参考にはなるかもしれません。鶏卵から作っているのでアレルギーを考慮する必要があるという記述は どこかで目にしたことのある人もいるかもしれません。

パンデミックワクチンの製造期間短縮について
背景
新型インフルエンザ発生時のパンデミックワクチンは、新型インフルエンザウイルス株の特定の後、 ワクチン製造用ウイルス株と鶏卵の確保ができ次第、また、通常期インフルエンザワクチン生産時期の場合には、 製造ラインを直ちに中断して新型に切り替えることを含め、適切に対応し、全国民を対象に製造を開始することとなっている。
しかしながら、現在の鶏卵によるワクチン製造においては、
1) たとえ通常期インフルエンザワクチン製造用の鶏卵をただちに転用するとしても、 鶏卵培養用の弱毒ウイルス株を製造する必要がある(約2カ月)
2) 現在のように、夏季に通常期インフルエンザを製造し、冬季にプレパンデミックワクチンを製造しているに際しては、 ほぼ通年、インフルエンザワクチン製造用の鶏卵を確保できるが、今後、 冬季の新型インフルエンザワクチンの製造を行わない場合には、その際、 鶏卵調達のために最大6カ月程度要する場合が発生する
等の課題があり、細胞培養による生産に比べて製造着手に時間を要すること。 また、現在のワクチン製造体制と、新型インフルエンザ発生時に初めて1人に15mcgの2回ワクチン接種を行うとした場合には、 国民全員分のワクチンを製造するためには、新型インフルエンザ発生から1年半前後の期間を要することが想定されている。
※2009年度以降、国内4社のインフルエンザワクチン製造能力をすべて新型インフルエンザワクチン製造に振り向けた場合、 インドネシア株、中国安徽株の増殖性を基に試算すると年間約8000万人から1億1000万人分の生産が試算される。
今後の方針
新型インフルエンザ発生後、ワクチン製造用のウイルス株が同定されてから6ヶ月ほどの間に、国民全員分のワクチン製造が完了することが望ましく、そのためには、現行の鶏卵によるワクチン製造だけでなく、細胞培養など、資材の調達や製造開始までの期間においてより有利な手法によるワクチン製造技術を確立することが必要である。

インフルエンザワクチンのできるまで

1 紫外線照射 薬剤(陽性石鹸液)に浸して表面を殺菌した卵を、 ステンレスの卵立てに気室を上に向けて立て、紫外線照射された小室に入れ、殺菌を繰り返す。

2 気室に錐にて穴あけ

3 種ウイルス接種 注射器を用いて種ウイルス液0.1mLずつ卵に摂取する。

4 蝋封 接種した穴はパラフィンで封じる。

5 孵卵 接種の終わった卵は36℃で48時間培養する。

6 正常鶏赤血球の電顕像

7 ウイルスを吸着した鶏赤血球の電顕像 ウイルスを培養後の孵化鶏卵の漿尿液と 鶏赤血球と混合した場合、ウイルスが赤血球に吸着されている。

8 検卵 48時間培養したのち、検卵し死卵は廃棄する(15%程度)。 生卵にはウイルスが十分発育している。

9 開卵 鋏を用いて卵の気室部の殻を直径約2cm程度に円形に切り取る。

10 漿尿液採取 漿尿液は卵から無菌的にプールされる。 これに0.1%の割合でホルマリンを加えてウイルスを不活化する。

11 精製 不活化された漿尿液をシャープレス超遠心機で遠沈し、漿尿液成分とウイルスを分離する。 上部の瓶はウイルスの入った遠心前のもの。下の瓶はウイルスを除いた廃液(漿尿液)である。

12 濃縮されたウイルス液(ワクチン原液)

13 小分け分注 各株の原液を一定の比率に混合希釈して、バイアル瓶に小分けする。 小分けした瓶より無差別にサンプルをとり、自家検定を行い、合格したものは国家検定を受けるために 国立予防衛生研究所に提出する。

国家検定

14 無菌試験(1) ワクチン製品中に各種細菌の沈染のないことを確かめる目的で行う。 被検品の培養操作中に空気中などからの細菌の混入を防ぐため、設備、装備、操作などに可能な限りの考慮が払われている。

15 無菌試験(2) ワクチンの一定量を培養器に入れて培養する。 試験管は逐次観察し、必要があれば鏡検・移植・分離等を行なって確認する。背景は、恒温槽と自記温度記録計。

16 安全試験 一般的な毒性物質の混入に対する試験である。モルモットに 被検ワクチンを接種後、冷暖房設備の部屋で飼育し、連日体重の測定、臨床的観察の他、 病理解剖学的および細菌学的検索なども行う。

17 力価試験(ワクチンのマウス免疫) ワクチンをそれぞれ25倍からはじめて、4段階 の5倍希釈を行い、各希釈ごとに体重15gのマウスの腹腔内にそれぞれ0.5mL摂取し、2週間免疫瘢に採血し鶏卵内中和試験に供する。

18 力価試験(鶏卵内中和試験) 孵化11日卵を用いて、尿膜腔内にマウス免疫血清とインフルエンザウイルス との混合液0.2mLずつ摂取し、35℃〜37℃に2日間置いた後、ウイルスの増殖の有無を調べワクチンの効力を判定する。


Support bacteria - they're the only
culture some people have!

	-- One of Nadav Har'El's Email Signatures.


Powered by UNIX fortune(6)
[ Main Page ]