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Asymptomatic Bacteruria - 無症候性細菌尿

Infectious Disease Society of America Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Asymptomatic Bacteruria in Adults (CID 2005: 40, Mar 1)

SUMMARY OF RECOMMENDATIONS

診断
無症候性細菌尿の診断は尿培養の結果に基づいて下される。 培養検体はコンタミネーションが起こらないよう、細心の注意を払って採取しなければならない。(A-II)
【診断の指標】
・無症状の女性:2つの検体を定量培養して同じ菌種が105cfu/ml以上見られること。(B-II)
・男性:清潔に取った1つの検体を定量培養して単一菌種が105cfu/ml以上見られること。(B-III)
※カテーテルを挿入して採取した検体の場合は定量培養して単一菌種が102cfu/ml以上見られること。(A-II)
膿尿
膿尿が無症候性の細菌尿と一緒に見られる場合でも抗生剤で治療する必要はない。(A-II)
治療
妊婦は妊娠初期に少なくとも一度は尿培養を行い細菌尿のスクリーニングを行うべきである。もし細菌尿があれば治療することが勧められる。(A-I)
・治療期間は3〜7日間とする。(A-II)
・治療後も定期的に尿培養を行い、細菌尿の再発がないか確認する。(A-III)
・培養がずっと陰性の場合に妊娠後期まで繰り返し尿培養を行う意義は不明である。
抗菌薬
TUR-Pの前には無症候性細菌尿につき評価し、もしあれば治療することが望ましい。(A-I)
・尿培養を行い、その結果に基づいて術前に抗菌薬治療を行うべきである。(A-III)
・抗菌薬を用いるのは術直前にする。(A-II)
・抗菌薬は術後には使わない。尿道カテーテルを留置する場合は術後も続けて良い。(B-II)
評価
粘膜出血が起こりうる泌尿器科的手技の前には無症候性細菌尿を評価し治療することが勧められる。(A-III)
その他
無症候性細菌尿の評価や治療は以下の群では勧められない。
・閉経前の妊娠していない女性、糖尿病の女性、施設に入所している高齢者、カテーテル留置中の人(A-I)
・市中で暮らしている高齢者、脊髄損傷を起こしている人(A-II)
.カテーテル留置による細菌尿がカテーテルを抜去後も48時間たっても見られる場合、抗菌薬による治療をおこなってもよい。(B-I)
.腎移植前や臓器移植前に無症候性細菌尿の評価を行い治療することを推奨する根拠はない。(C-III)

PURPOSE

無症候性細菌尿を放置することで有害事象が起こらないか、無症候性細菌尿を評価し治療することで 有害事象を減らせるかということをもとに、無症候性細菌尿の評価・治療についてのガイドラインを作成する。 ・有害事象―短期:UTIの発症、長期:慢性腎疾患や高血圧の進行、尿路悪性腫瘍の発症、生命予後の悪化 ※抗菌薬治療による有害事象―耐性菌の出現、薬剤の副作用、費用

DEFINITIONS

無症候性細菌尿
尿の定量培養で一定以上の菌が検出されるが尿路感染に関連した症状が認められない状態。
急性単純性尿路感染
尿路奇形のない(主に)女性での症候性膀胱炎|頻尿、尿意切迫、排尿困難、上恥骨部痛
急性非閉塞性腎盂腎炎
尿路奇形のない(主に)女性での腎臓の感染症|CVAの自発痛・叩打痛、発熱
複雑性尿路感染
器質的・機能的尿路閉塞がある人での尿路感染男性の尿路感染では通常複雑性尿路感染が疑われる。
再発(relapse)
最初に検出された菌の治療後に同じ菌種で再度尿路感染が起こること。
再感染(reinfection)
尿路感染の治療後に別の菌種で尿路感染が起こること。
膿尿(pyuria)
多核球が多数検出される尿。―尿路系での炎症反応を示唆する。

LITERATURE REVIEW

PUBMEDで検索した英語論文、およびその関連論文をレビューしている。 さらにUTIの専門家から検索にかかっていない臨床研究を紹介してもらっている。 一般性が保障されないような症例数の少ない論文、脱落症例によりバイアスが生じているような論文、 適切な統計操作が行われていない論文は本レビューでは取り扱っていない。

DIAGNOSIS

無症状の女性
2つの検体を定量培養して同じ菌種が105cfu/ml以上見られること。(B-II)
女性の場合、清潔に採取された排尿検体を定量培養して105cfu/ml以上見られる場合、 培養結果はカテーテルでの採尿と95%以上で一致する。また複数回の排尿検体を比較する場合、 1回目の培養結果は数日後に採取した2回目の結果と80%程度しか一致しないが、2回が一致している場合3回目との一致率は95%を超える。
男性
清潔に取った1つ検体を定量培養して単一菌種が105cfu/ml以上見られること。(B-III)
男性の場合、清潔に採取された排尿検体を定量培養して腸内細菌属の菌が105cfu/ml以上見られる場合、 1週後の培養でも98%が同様の結果を示す。なお外来患者では有症状例がほとんどであるが103cfu/ml以上 を閾値とした場合に感度、特異度とも97%となる。

膿尿が無症候性の細菌尿と一緒に見られる場合でも抗生剤で治療する必要はない。(A-II) 膿尿は炎症の指標であり、無症候性細菌尿で頻繁に見られるが、他の炎症性疾患でも見られる (ex.腎結核、STD、間質性腎炎などの非感染性疾患)。ゆえに膿尿自体は細菌尿の診断、症候性か否かの鑑別には用いることはできない。

MICROBIOLOGY OF ASYMPTOMATIC BACTERIURIA

E.coliが無症候性細菌尿で検出される菌の中では最も多いが、急性単純性尿路感染症で見られるよりも割合としては低い。 また、無症候性細菌尿で見られるE.coliは症候性のUTIで見られるものより病原性が低い。その他、腸内細菌属、CNS、腸球菌、 B群レンサ球菌、Gardnerella vaginalisがよく見られる。 尿路系の異常がある場合、より広い菌種が原因となりうる。 (男性の場合Proteus mirabilisの方がE.coliより頻度が高い。) 長期にカテーテルなどを留置されている場合は、複数菌による細菌尿が見られるようになり、P. aeruginosaやウレアーゼ産生菌が関与するようになる。

THE MANAGEMENT OF SYMPTOMSTIC BACTERIURIA

閉経前の妊娠していない女性で細菌尿のスクリーニングを行い、治療することは推奨されない(A-I)

短期的な有害事象
・無症候性細菌尿がある場合、検査後の一週間で症候性のUTIを起こす頻度が高い。(8% V.S. 1%)
・細菌尿出現後1月の間はUTI発症のリスクが高い。
長期的な有害事象
・スウェーデンの研究では15年の追跡で無症候性細菌尿がある場合には症候性UTI(55% V.S. 10%)も腎盂腎炎(7.5% V.S. 0%)も発症の危険性が高い。
・追跡開始時に細菌尿がある場合、抗菌薬治療の有無に関わらず、フォロー中の細菌尿の頻度はもともと細菌尿がない群より高い。
・年齢、体重などを揃えて比較した場合、細菌尿の有無は死亡率と関連しない。
・15年の追跡で細菌尿の有無は高血圧や慢性腎疾患の罹患率と関連しない。
・24年の追跡で細菌尿の有無は慢性腎疾患の進行、死亡率と関連しない。
・3〜5年の追跡で細菌尿の有無は血清Cre値、経静脈的腎盂造影で異常が見つかる割合と関連しない。
・細菌尿をNitrofurantoinで1週間治療した場合、対象群と比較して6ヶ月後の細菌尿の頻度は減るが、1年後の頻度は変わらない。 また1年間での症候性UTIの罹患率は変わらない。
⇒無症候性細菌尿の有無は短期的な有害事象のリスクをあげるが、長期的な有害事象の頻度とは関連しない。また無症候性細菌尿がある場合UTIを起こす頻度が高いことは、hostの要因が大きく、無症候性細菌尿を治療してもUTIの頻度は減らないし、長期的には無症候性細菌尿の頻度にも影響しない。
妊婦は妊娠初期に少なくとも一度は尿培養を行い細菌尿のスクリーニングを行うべきである。もし細菌尿があれば治療することが勧められる。(A-I)
・妊娠初期に無症候性細菌尿がある場合、UTIのリスクが20〜30倍高く、早産・低出生体重児の頻度も高い。
・無症候性細菌尿を抗菌薬で治療すると、腎盂腎炎のリスクが下がる。(20-35% V.S.1-4%)
・無症候性細菌尿を抗菌薬で治療すると、低出生体重児・早産のリスクが下がる。
⇒妊娠初期には無症候性細菌尿への抗菌薬治療は有益である。
治療期間
・出産時まで抗菌薬を続けた場合と、14日間治療してその後尿の評価を続けて再発時に治療した場合では治療のoutcomeに差がない。
・治療期間として1回、3日間、4日間、7日間を比較した場合、どれかを推奨するだけのevidenceは確立されていない。
スクリーニング
・膿尿での細菌尿のスクリーニングは感度が50%しかなく、尿培養自体でのスクリーニングが望ましい。
・妊娠12〜16週で無症候性細菌尿が見られない場合、以降腎盂腎炎を発症する頻度は1〜2%である。 (ルーチンにスクリーニングをすることがどれくらいの予防効果を持つかは不明)
・腎盂腎炎の発症をoutcomeとした場合、細菌尿の頻度が2%、細菌尿がある場合の腎盂腎炎のリスクが13%より高い場合、妊娠第1期に一度スクリーニングを行うことは費用の面から考えても有益である。
糖尿病の女性で細菌尿のスクリーニングを行い、治療することは推奨されない(A-I)
・18ヶ月および14年の追跡で無症候性細菌尿の有無は症候性UTIの頻度、死亡率、DMの合併症の進行と関連しない。
・無症候性細菌尿を治療しても、UTI発症までの期間、発症率、UTIや他の原因での入院の回数に影響しない。
・抗菌薬治療を受けない場合でも、DM腎症などの合併症の進行には影響しない。
・抗菌薬治療を受けた場合、受けない場合より5倍抗菌薬を服用することになり、副作用の頻度が増す。
市中で暮らしている高齢者で細菌尿のスクリーニングを行い、治療することは推奨されない(A-II)
・閉経後の女性でも、閉経前同様に無症候性細菌尿による有害事象の増加なく、治療によりoutcomeが改善されるということはない。
・高齢者向けアパートに住んでいる女性で外来受診した人を対象としたRCTでは抗菌薬治療により6か月後に細菌尿の罹患率は下がるが、症候性UTIの頻度は減らさないという結果が出ている。
・退役軍人を対象とした研究でも無症候性細菌尿が何らかの有害事象と関連しているという結果は得られず。
・スウェーデン人および85歳以上のフィンランド女性の5年間の追跡研究で細菌尿と死亡率の関連性は見られない。
施設に入所している高齢者で細菌尿のスクリーニングを行い、治療することは推奨されない(A-I)
・無症候性細菌尿を治療しても症候性UTIの発症率は低下せず、慢性的な尿路系症状も改善しない。
・無症候性細菌尿の治療は、抗菌薬による副作用の頻度を増やし、耐性どの高い菌の再感染のリスクを増す。
・無症候性細菌尿の有無は生存率に影響を与えない。
脊髄損傷を起こしている人で細菌尿のスクリーニングを行い、治療することは推奨されない(A-II)
・脊髄損傷患者では無症候性細菌尿・症候性UTIの頻度が高い。
・無症候性細菌尿にたいして抗菌薬治療を7〜14日間行った場合、治療終結30日後には93%で再感染し、28日間行っても、85%で再感染が見られる。再感染の菌種は耐性度が高くなる。
・抗菌薬治療の有無によらず、間欠的にカテーテルを挿入し残尿を排出させている患者ではUTIの発症頻度は変わらない。
尿道カテーテル留置中の人で細菌尿のスクリーニングを行い、治療することは推奨されない(A-I)
短期留置(30日以内)
・急性期病院で短期間尿道カテーテルを留置される患者のうち80%以上は抗生剤治療を受けている。その多くは尿路感染以外の理由である。
・あるコホート研究では1497例のカテーテル留置患者のうち235例でカテーテルによる細菌尿をきたしているが、90%は無症候であり、2次性の血流感染を起こしたのは1例であった。
・尿道カテーテルによる細菌尿がある群ではそうでない群と比べて死亡率が3倍高いという報告があるが、因果関係は不明で、抗菌薬治療は死亡率に影響しない。
・313例の真菌尿(半数以上はカテーテル留置中)に対する抗菌薬治療のRCTでは、カテーテル留置中の患者では治療終結2週間後の真菌の消失率に有意差を認めず、臨床的には有益性が示されなかった。
・短期間留置されたカテーテルを抜去し、48時間後にも細菌尿が持続している女性では抗生剤治療により、症候性UTIのリスクが低下する(0% V.S. 17%)。
長期留置
・Cephalexin感受性菌に対しcephalexinの治療を行った場合でも、12〜44週の追跡期間で発熱するリスクは変わらない。再感染の可能性も変わらないが、耐性菌の出現率が増加する(64% V.S. 25%)。
・細菌尿に対して抗菌薬治療を行っても、治療後の発熱の頻度は治療前と変わらない。さらに、抗菌薬治療後すぐに耐性の高い菌の再感染が起こる。
TUR-Pの前(A-I)、粘膜出血が起こりうる泌尿器科的手技の前(A-III)には無症候性細菌尿につき評価し、もしあれば治療することが望ましい。
・無症候性細菌尿がある患者にTUR-Pを行う場合60%で菌血症を呈し6〜10%で敗血症をきたす。
・抗菌薬治療により菌血症を予防できる。
・粘膜出血の起こりうる手技はTUR-P同様菌血症のリスクが高いと考えられる。
治療期間
・再感染のリスクを考えると、手技の前夜か直前に治療を行うことが望ましい。
・カテーテルが留置されていない場合、細菌尿の評価は手技の直前に行い、結果を踏まえて治療する。
・手技後は抗菌薬は通常不要だが、TUR-Pなど手技後に尿道カテーテルを留置する必要がある場合にはカテーテルを抜去するまで抗菌薬を続けるほうが良いという報告もある。
腎移植前や臓器移植前に無症候性細菌尿の評価を行い治療することを推奨する根拠はない。
・最近の研究では無症候性細菌尿の有無とグラフト生着に関連はないとされている。
・レシピエントのUTI発症、グラフトの非生着はともに尿路奇形の有無と関連があり、無症候性細菌尿よりは症候性UTIの既往と関連が高い。
・移植後6ヶ月は細菌尿のスクリーニングを勧める専門家もいるが、最近のガイドラインではスクリーニングを行うことを勧めてはいない。
・骨髄移植、PBCでの肝移植では細菌尿の評価は推奨されてはいない。その他の固形臓器の移植に関しては十分に評価がなされていない。
・女性では無症候性細菌尿の頻度はHIV感染の有無と関連しないが、男性ではHIV感染者で無症候性細菌尿の頻度が高い。無症候性細菌尿の有無と有害事象に関連はない。

SUMMARY

無症候性細菌尿はよく見られる病態である。 妊婦の場合および粘膜出血を伴う泌尿器科的手技を受ける患者の場合には有害事象の危険性が高く、 抗菌薬治療が有害事象の予防に有効と考えられるため、治療が勧められる。しかし、 その他の集団では無症候性細菌尿は有害とはいえない。症候性UTIのリスクが高くなる群でも、 治療によりUTIの頻度を減らすことはできないため、治療は推奨されない。

RESEARCH PRIORITIES

臨床検査の所見、細菌学的検査の所見の新たな解釈の確立
妊婦で初回の尿培養が陽性の場合、2回目の培養を行い無症候性細菌尿の診断を確立することの意義
適切な臨床試験で妊婦での無症候性細菌尿に対する最適な治療期間を評価すること
細菌尿の頻度が高い施設に入所している高齢者で症候性UTIを呈している場合の特徴のより詳細な評価
慢性腎疾患患者での無症候性細菌尿の管理
尿道カテーテル以外の泌尿器科デバイスの長期留置を行った患者での自然経過や適切な管理法の記述
尿道カテーテルを留置していない場合にウレアーゼ産生菌による無症候性細菌尿がある場合の評価・治療
免疫不全患者を群ごとに評価し、無症候性細菌尿が与える影響を記述すること
侵襲的な泌尿器科的手技の前に行う抗菌薬治療の時期・期間を臨床試験を行って評価すること
人工物を挿入する手技の前に無症候性細菌尿の評価・治療を行うことの意義
When the Macintosh first came out, there was no software available for it. So
obviously, Apple created a giant glossy catalog listing all the great software
that was "available". Half of the items listed said, in fine print, "under
development," and the other half couldn't be had for love or money. Some were
such lame products nobody would buy them. But even having a thick glossy
catalog with one software "product" per page described in glowing prose
couldn't disguise the fact that you just could not buy a word processor or
spreadsheet to run on your 128KB Macintosh. There were similar "software
product guides" for NeXT and BeOS. (Attention, NeXT and BeOS bigots: I don't
need any flak about your poxy operating systems, OK? Write your own column.)
The only thing a software product guide tells you is that there is no software
available for the system. When you see one of these beasts, run fleeing in the
opposite direction.

    -- Joel Spolsky
    -- "Strategy Letter II: Chicken and Egg Problems" ( http://www.joelonsoftware.com/articles/fog0000000054.html )

Do what comes naturally.  Seethe and fume and throw a tantrum.


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