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発熱と不明熱へのアプローチ

発熱は感染症の存在を疑う契機となる重要な症候であるが、感染症以外にも発熱をきたす疾患や病態は数多く存在する。 逆に発熱が存在しなくとも感染症の存在は否定できない。感染症の存在にもかかわらず発熱反応が減弱する要因としては高齢、 尿毒症、高度の低栄養、ステロイドや解熱剤の投与などがある。また、重症感染症そのものが発熱反応の減弱を招くことがあるため注意を要する。 敗血症患者の約1/3は発熱を認めず、約10%はむしろ低体温を呈し、低体温はしばしば重症で予後不良の敗血症の徴候であることが知られている。
従来、「間欠熱」「弛張熱」「稽留熱」といった「熱型」が重要な原疾患診断の手段として強調されてきた。 熱型の評価も重要であるがしばしば解熱剤などにより修飾され、ある熱型がある疾患に特異的とは言い難くなっている。 なお、41.1℃を超えるような高熱は熱射病、悪性高熱症、薬剤熱、副腎クリーゼ、甲状腺中毒症などの非感染性の原因によることが多い。

外来患者の発熱

発熱を主訴に外来を受診する患者は多い。多くの患者は何らかの局所症状を有しそこから鑑別診断を検討することになる。 Commonな感染症の診断や抗菌薬治療の適応について医師に正しく理解されていないことがあり、これが抗菌薬の濫用につながっている。 例えば、上気道感染の患者の抗菌薬投与の適応を決定するのはA群β溶連菌咽頭炎や細菌性副鼻腔炎の有無である。 また、下気道感染症の抗菌薬投与の適応は気管支炎か肺炎か、すなわち胸部画像診断において新たな浸潤影の出現を認めるか否かによる。 膿性喀痰の有無やCRP値のみでは抗菌薬投与を決める指標とはならない。さらに免疫不全の有無や、 慢性閉塞性肺疾患などの基礎疾患の有無によっても抗菌薬投与の適応は異なる。

古典的不明熱

3週間以上持続する38.3℃以上の発熱があり医療機関での1週間の精査によっても原因が特定されないものが不明熱と定義される。 3週間という期間は主に病原体診断が困難であるが自然軽快するウイルス性疾患を除外する目的で設定されている。 なお、免疫不全、海外渡航後などの背景を有する場合は鑑別診断や診断的アプローチが異なるので別に検討することになる。 不明熱の原因となりうる疾患は多岐にわたり患者の症状や年齢、在住地域などにより考慮すべき疾患が異なるため 診断を確定するためには各患者に応じたアプローチが必要である。初期評価として施行すべき検査とそれに加えて考慮されるべき検査は いくつかのReviewで提示されている1)2)(表1)。不明熱の原因として比較的頻度が高いものとしては感染性心内膜炎、骨髄炎、結核、 各種の膿瘍などの感染症、悪性リンパ腫などの悪性腫瘍、慢性関節リウマチ、成人スティル病、側頭動脈炎、大動脈炎症候群などの結合組織疾患などがある。

入院患者の発熱

入院患者の発熱3)の際には外来患者とは異なるアプローチが必要である。存在する基礎疾患やそれに対する薬剤の投与や カテーテルの挿入などの医療的介入が病態を複雑化することも多く、また意識障害や鎮静のために症状や身体所見の評価が困難なこともある。 カテーテルの挿入は局所免疫の低下やバイオフィルムの形成により感染症発症の危険因子となるため、 挿入部の観察と関連する感染症の可能性を考慮することは特に重要である。入院患者が発熱した場合、 原因として非感染性の要因と感染性の要因を検討する必要がある。
非感染性の要因のうち術後早期の発熱、輸血や血液製剤投与後の反応性の発熱、抜歯その他の医学的処置に伴う発熱などは1日~2日以内に改善することが多い。 この他に薬剤熱、無石性胆嚢炎、血腫、深部静脈血栓症、肺塞栓症、甲状腺中毒症、副腎クリーゼなどが発熱の原因となりうる。
入院患者の10%は少なくとも1度の薬剤熱のエピソードをきたす3)と報告されており、その有無の検討は重要である。 薬剤熱4)は薬剤過敏反応による発熱とその他の要因による発熱に分類される(表2)。薬剤過敏反応による発熱は抗痙攣薬、 抗菌薬、抗不整脈薬などで頻度が高く薬剤投与開始後数日から3週間の間に起こることが多いが長期投与後に発症することもある。 相対的徐脈は薬剤熱の患者にしばしばみられ重要な徴候である。好酸球増加、皮疹は存在すれば診断に有用であるがそれぞれ薬剤過敏反応患者の 10~20%程度に認めるにすぎない。人工呼吸管理などの目的で長期間、高用量のベンゾジアゼピン系薬剤やオピオイドを投与した後の患者では 投薬中止後に離脱症状による発熱をきたしうるので注意を要する。
感染性の要因は多岐にわたるが院内肺炎(特に気管内挿管中の患者)、尿路感染症(特に尿路カテーテル挿入中の患者)、血管内カテーテル関連血流感染症、 偽膜性腸炎(抗菌薬投与中、投与後の患者)、副鼻腔炎(経鼻胃管挿入中、経鼻挿管中の患者)、真菌感染症(中心静脈カテーテル挿入中、広域抗菌薬使用患者) などを考慮する。
発熱の原因が明らかでない状況でもバイタルサインの変動、即ち38℃以上の発熱、90/分以上の頻脈、15/分以上の頻呼吸を伴い重症感のある 敗血症的な患者では経験的抗菌薬投与が必要となるが、投与開始前に必ず血液培養2セットを採取し、想定される感染部位に応じた検体の塗抹、培養検査を行う。
術後患者の発熱の原因は手術からの日数である程度推測することができる(表3)。一般に術後48時間以内の発熱は重篤な症状を伴わなければ 重大な要因によることは少ないが48時間以降に発症あるいは遷延する発熱は精査を要すると考えられている。術後創部感染は術後48時間以内には稀であるが、 連鎖球菌やクロストリジウムによるものは早期に発症する可能性があるので可能性のある場合は創部浸出液の塗抹検査を行って評価する5)

免疫不全患者の発熱

免疫不全患者の感染症の起因病原体は免疫不全の種類により大きく異なる(表4)。例えば呼吸器感染症患者でも進行したHIV感染症患者と 遷延する好中球減少患者では想定すべき起因病原体が全く異なる。外科的に脾摘を行われた患者は肺炎球菌などの被包化細菌の重症敗血症の リスクが増すため肺炎球菌ワクチンの接種が必要である。
好中球減少時の発熱は致命的となりうる重篤な病態である。近年は起因病原体としてはグラム陽性球菌の頻度が高いが、 経験的治療としては短時間で致死的な経過を取りうるグラム陰性桿菌を確実にカバーする抗菌薬をまず選択する。
好中球減少患者やHIV患者は予防的抗菌薬投与の対象となることがあり、これも起因菌に影響するため抗菌薬の内服の有無も確認することが必要である。 また、免疫不全患者では感染症による画像所見が非典型的所見を呈することが多いことに注意を要する。 想定される起因病原体の種類が多いこともあり気管支鏡検査などの侵襲的検査は免疫正常者よりも積極的に考慮されるべきである。

海外渡航後患者の発熱

海外渡航地域や現地での行動により想定すべき病原体が異なる。渡航後の発熱患者では通常の問診に加えて滞在地域(国名だけでなく詳細な地域名も)、 現地での行動(野外活動、水との接触の有無、性行動など)や滞在環境、渡航前のワクチン接種の状況や予防内服の有無、現地での食事や飲料水の内容、 虫刺されの有無などについて聴取する。鑑別診断は多岐にわたるが治療が遅れると致死的になりうるという点で熱帯熱マラリアを鑑別することは重要である。 予防薬内服をしていても耐性マラリアに感染することはあり、渡航後の発熱患者では常に検討を要する。 マラリアを疑う患者では血液塗抹ギムザ染色標本を12~24時間の間隔をあけて2回確認する必要がある。また、腸チフス、 パラチフスなどを見落とさないように血液培養、便培養検査も重視すべきである。

まとめ

発熱を呈する患者に対して十分な問診、診察、検査により病態を分析して原疾患を診断することが重要であり、 盲目的に不適切な抗菌薬を投与することは厳に慎むべきである。一方、発熱の原因が迅速な治療を要する敗血症、髄膜炎、 好中球減少時の発熱などの重症感染症の徴候である場合もあるのでこれらの存在を見落とさないようにすることが重要である。 重症の細菌感染症を疑う場合は必ず血液培養2セット以上を採取した後に経験的抗菌薬投与を開始する。

付表

表1 不明熱患者の初期評価のための検査

ルーチン検査
血算・白血球分画、LDH・ビリルビン・肝酵素を含むルーチンの生化学検査、尿定性・沈渣、胸部X線検査、血沈、抗核抗体、 リウマチ因子、ACE、抗菌薬投与前の血液培養2セット以上、Cytomegalovirus IgM抗体、小児や若年者ではEpstein-Barr virus特異抗体検査、 ツベルクリン反応、腹部CT、HIV抗体検査あるいはPCR検査
考慮される検査
Q熱血清検査、肝炎ウイルス血清検査、核医学検査、肝生検、側頭動脈生検、下肢静脈ドップラーエコー、Dukes criteriaに基づく感染性心内膜炎の検討

表2 薬剤熱の分類

薬剤過敏反応による発熱
抗痙攣薬(カルバマゼピン、フェニトイン)、抗菌薬(β-lactam、サルファ剤、ミノサイクリンなど)、抗不整脈薬(プロカインアミド)、 アロプリノール、抗結核薬、降圧薬(Ca拮抗薬、β遮断薬、メチルドーパ)、利尿剤、非ステロイド系解熱鎮痛薬など
薬剤の体温調節機構への影響による発熱
甲状腺ホルモン剤、抗コリン系薬剤(三環系抗うつ薬、アトロピン、抗ヒスタミン薬、フェノチアジン系薬剤、ブチロフェノン系薬剤)、 交感神経興奮性薬剤(アンフェタミン、コカイン、MDMA)など
薬剤投与そのものに対する反応性の発熱
ペンタゾシン、アンホテリシンB、ブレオマイシンなど
薬剤の薬理作用による発熱
固形腫瘍、血液腫瘍に対する化学療法施行後の発熱、二期あるいは三期梅毒、ブルセラ症などの治療に伴って起こりうるJarisch-Herxheimer反応、 インターフェロン投与後の発熱など
特異反応による発熱
悪性高熱症、悪性症候群、セロトニン症候群

表3 術後の発熱

術後24時間以内
術後の反応性の発熱、無気肺、特殊な術創感染(連鎖球菌やクロストリジウム)、状況により急性副腎不全や甲状腺中毒症も考慮
術後1~2日
上記の他に尿道カテーテル、血管内カテーテル関連感染症を考慮
術後3~5日
上記の他に肺炎(特に気管内挿管患者)、術創感染、深部静脈血栓症、胆嚢炎、膵炎、縫合不全、血腫など
術後6日以降
さらに膿瘍、感染性血腫、偽膜性腸炎、耳下腺炎など

表4 免疫不全の種類と関連する病原体

顆粒球減少症
関連する病態 化学療法施行後
関連する病原体 腸内細菌、緑膿菌、ブドウ球菌、カンジダ、アスペルギルスなど
細胞性免疫不全
関連する病態 HIV感染症/悪性リンパ腫/ステロイド投与/免疫抑制剤投与
関連する病原体 単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、リステリア、 レジオネラ、サルモネラ、抗酸菌、カンジダ、クリプトコッカス、ニューモシスチス、トキソプラズマなど
液性免疫不全/脾機能低下
関連する病態 多発性骨髄腫/慢性リンパ性白血病/脾摘
関連する病原体 肺炎球菌、髄膜炎菌、インフルエンザ菌、クレブシエラなど

文献

1) Arnow P, et al: Fever of unknown origin. Lancet 350: 575-580, 1997
2) Mourad O, et al: A comprehensive evidence-based approach to fever of unknown origin. Arch Intern Med 163: 545-551, 2003
3) Rizoli SB, et al: Saturday night fever: finding and controlling the source of sepsis in critical illness. Lancet Infect Dis 2: 137-144, 2002
4) Mcdonald M, et al: Drug fever. UpToDate 13.3 www.uptodate.com
5) Stevens DL, et al: Practice guidelines for the diagnosis and management of skin and soft-tissue infections. Clin Infect Dis 41: 1373-1406, 2005

Chuck Norris reads all messages posted to LKML (= the Linux Kernel Mailing
List), understands them all, and he kills all gnomes he sees in sight.

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                      Norris Facts by Shlomi Fish and Friends ( http://www.shlomifish.org/humour/bits/facts/Chuck-Norris/ )

 <rindolf>  mst: sorry for that - that was not my intention.
     <mst>  rindolf: I know it wasn't. you aren't that retarded. but the
            way your comment came across was :)
 <rindolf>  mst: yes.
 <rindolf>  mst++
 <rindolf>  mst: "you aren't that retarded." - you shouldn't insult my
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 <Altreus>  I think you can spell made-up words like 'retardedness'
            however you like
 <carpftb>  if you're a retard.
   <Botje>  heh
   <Botje>  working hard is the exact opposite of retardedness :]
 <Altreus>  hardly working

    -- Retardedness
    -- #perl, Freenode


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