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感染症シリーズ - ペニシリン系抗菌薬

*以下の抗菌薬各論では推奨抗菌薬投与量を記載している。保険適応外の投与量になる場合はその旨記載してある。 この投与方法を実際の患者に適応するか否かは最終的には主治医の判断となり投与後に生じた転帰に対する責任も(良かれ悪かれ)主治医に帰する。 適応する場合には患者及び家族への十分な説明を。

ペニシリンからみた細菌の大まかな分類

グラム陽性球菌
ブドウ球菌系
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)
耐性菌が多い。
黄色ブドウ球菌
メチシリン感受性(MSSA)
βラクタマーゼ産生菌が多くペニシリン系単独では無効なことが多い(βラクタマーゼ阻害剤があれば有効)。
メチシリン耐性(MRSA)
ペニシリン系はすべて無効。
レンサ球菌系
βレンサ球菌
ペニシリン系が常に有効。
αレンサ球菌
低感受性菌もいるが高用量で使用すれば大抵効く。
肺炎球菌
高度耐性菌は少なく、髄膜炎以外の疾患では大抵効く。
腸球菌
ペニシリン系が有効。院内を中心に耐性菌もいる。
グラム陰性桿菌
インフルエンザ菌
βラクタマーゼ産生あるいは他の機序により耐性菌がいる。
腸内細菌
耐性度の低い群
初期のペニシリンは無効。
耐性度の高い群
抗緑膿菌作用のあるペニシリン系のみ有効。
ブドウ糖非発酵菌
抗緑膿菌作用のあるペニシリン系のみ有効。
耐性度の低い腸内細菌→E. coli, Klebsiellaなど。耐性度の高い腸内細菌→Enterobacter, Serratia, Citrobacterなど。 もちろんこれらは一般論であり検出菌ごとに耐性パターンは異なる。
嫌気性菌
横隔膜より上(主に口腔内)
一部βラクタマーゼ産生菌が存在するが比較的有効。
横隔膜より上(主に下部消化管)
βラクタマーゼ産生菌が多く、耐性菌がほとんど(注1)。

ペニシリンG(PCG)

ペニシリンGカリウム(R) 200〜400万単位 4時間おき(24時間持続投与もあり)

レンサ球菌系に活性が高い。特にβレンサ球菌には耐性菌がいない。αレンサ球菌については一部に耐性菌がいるが高度耐性菌は少ない。 低感受性菌に対しては増量すれば大抵効く。肺炎球菌に対しても有効。ペニシリン耐性肺炎球菌に対しては髄膜炎の場合のみ無効だが、 肺炎などの髄膜炎以外の疾患に対しては多くの場合大量投与すれば有効であると考えられている(注4)。腸球菌にも有効であるが耐性菌(注5)もいる。 βラクタマーゼ産生菌が多い黄色ブドウ球菌には概ね無効。 グラム陽性桿菌であるリステリアには有効。グラム陰性球菌である髄膜炎菌に対しては有効。βラクタマーゼ産生菌が多い淋菌、モラキセラには無効。 グラム陰性桿菌に対しては全く効果がない。 かつては嫌気性菌に対する活性は高かったが、今はβラクタマーゼ産生菌が増えたため経験的治療で使用するのはリスクがある。 しかし、今でもクロストリジウムやフゾバクテリウムには有効であり、口腔内の嫌気性菌に対してはある程度効く。腸管内の嫌気性菌には無効。

<PCGの適応>
レンサ球菌感染症→心内膜炎、軟部組織感染症、急性咽頭炎など。多くの肺炎球菌性肺炎。ペニシリン感受性肺炎球菌(PSSP)による髄膜炎。進行梅毒。

アンピシリン(ABPC)

ビクシリン(R) 1g6時間おき 重症例や髄膜炎では2g4時間おき

リステリアに対してはPCGよりも確実に優れている。腸球菌に対する活性もPCGよりも若干高い。他のグラム陽性球菌に対してはほぼ同等。 レンサ球菌系には活性が高いがブドウ球菌には概ね無効(βラクタマーゼ)。 インフルエンザ菌はβラクタマーゼ産生あるいはその他の機序による耐性菌がいるが感受性がある場合には有効である(注6)。 かつては大腸菌に対して有効であったが、現在は耐性菌が多く、他のグラム陰性桿菌に対しては基本的に効果はない。 嫌気性菌に対する効果はPCGとほぼ同等。

<ABPCの適応>
リステリアの治療。特にリステリアのリスクがある人の髄膜炎の経験的治療には必須。 腸球菌の治療。PCGよりも若干活性が高い。ただし静菌的なので重症例はGMを併用。 PCGの代替薬として(PCGは血管痛が強いため大量の輸液が必要なので輸液を減らしたい時、あるいはPCGを採用していない医療機関で用いられる)。 現在ではグラム陰性桿菌に対する積極的な適応はない。

アンピシリン/スルバクタム(ABPC/SBT)

ユナシンS(R) 1.5g6時間おき 重症例では最大3g6時間おき (保険適応外)

ABPCとβラクタマーゼ阻害剤であるSBTの合剤。βラクタマーゼ産生によってABPCに耐性獲得している菌に対して有効(他の機序による耐性菌には無効)。 具体的にはグラム陽性球菌では黄色ブドウ球菌(MRSAを除く)、陰性球菌では淋菌、モラキセラ、陰性桿菌ではインフルエンザ菌、 耐性度の低い腸内細菌(大腸菌、クレブジエラなど)。横隔膜上下の嫌気性菌にも有効(耐性菌は殆どいない)。 肺炎球菌、腸球菌を含むレンサ球菌系に対しては基本的にはβラクタマーゼを産生しないので(注7)、効果はABPCと変わらない。 耐性度の高い腸内細菌(エンテロバクター、セラチアなど)には無効(注8)。緑膿菌などのブドウ糖非発酵菌にも無効(注9)。

<ABPC/SBTの適応>
多くのグラム陽性球菌、市中感染症で起炎菌となりやすいグラム陰性桿菌、嫌気性菌に対して有効性が高いので、様々な市中感染症の経験的治療で使用できる。 特にレンサ球菌系を強力にカバーしつつ黄色ブドウ球菌や一部のグラム陰性桿菌も抑えておきたい時や嫌気性菌との混合感染が考えられる時に有用。 例えば市中肺炎では肺炎球菌を確実にカバーしつつインフルエンザ菌、モラキセラ、黄色ブドウ球菌、クレブジエラなども概ねカバーできる。 また、市中の腹腔内感染症(胆嚢炎、虫垂炎、憩室炎など)では腸内細菌と嫌気性菌の複数菌感染が多いが、これらを単剤でカバーできる。 また、咬傷による感染では口腔内のレンサ球菌、ブドウ球菌、嫌気性菌などの複数菌が起炎菌になるため良い適応となる。 しかしながら市中のE. coliに対しても無視できない程度(20-30%程度)に耐性菌が存在するので注意を要する。 このこともあり尿路感染症に対する単剤使用は推奨しない。 レンサ球菌系による単独感染と判明した場合はβラクタマーゼ阻害剤の意味はないのでABPCかPCGを選択する。

ピペラシリン(PIPC)

ペントシリン(R) 2g6時間おき 重症緑膿菌感染症では1日量12-24g(保険的適応外)

抗緑膿菌作用のあるペニシリン系抗菌薬。 グラム陰性桿菌に対する抗菌スペクトラムはABPCよりも拡大し、ABPCが全く効かない腸内細菌やブドウ糖非発酵菌に対しても抗菌活性がある。 しかし、βラクタマーゼには分解されやすい。黄色ブドウ球菌に対しては概ね無効(βラクタマーゼ産生による)であり、 連鎖球菌や超球菌に対する活性もPCG, ABPCよりもやや劣る。嫌気性菌に対しても活性を有するが腸管内の嫌気性菌に対しては効かないことが多い(βラクタマーゼ)。 PIPCは感受性試験で感受性ありと判定されてもよく見るとMIC(最小発育阻止濃度)が高い時がある。 PIPCは安全域が広いので大量投与が可能であることを考慮してブレイクポイント(感受性試験の「S」「I」「R」を決定するMICの閾値) を高めに設定しているためである。しかし、このブレイクポイントは米国の投与量を基準に作られているので注意を要する。 ちなみに米国のPIPCの標準投与量は8〜24g/日であるが、日本の保険適応上の最大投与量は8g/日である・・・。

<PIPCの適応>
緑膿菌感染と判明し、感受性があると確認されている場合。院内感染症のEmpiric therapyでは耐性菌の頻度を考えると単剤では危険である。 使用する場合は十分量で使用する(特に重症の緑膿菌感染症の場合)。グラム陽性球菌に対する積極的な適応はない。

ピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)

タゾシン(R) 2.5g6時間おき (保険適応外だが保険適応量では有効な治療は不可能)

PIPCとβラクタマーゼ阻害剤であるTAZの合剤。PIPCのスペクトラムに加えてβラクタマーゼ産生によってPIPCに耐性獲得している菌に対しても有効。 ほとんどのグラム陽性球菌、腸内細菌、ブドウ糖非発酵菌、嫌気性菌に対して有効。 抗菌スペクトラムはかなり広く有効菌種名でいえばカルバペネムと同程度のスペクトラムを有する。 ESBL産生菌やメタロβラクタマーゼ産生菌などの特殊な耐性菌には十分な活性を有さない(前者にはカルバペネムが有効、後者はβラクタム剤は全て無効)。 βラクタマーゼ以外の耐性機構で耐性獲得している菌に対しては効果はPIPCと同じ。例えば、MRSAやPRSPは結合部位の変異によって耐性獲得している。 また、耐性度の高い腸内細菌や緑膿菌に対する効果はPIPCとそれ程大きな違いがない(注10)。PIPC/TAZ はPIPC以上に日本の保険適応上の投与量は少ない。 米国の透析患者に対する投与量よりも少ない・・・。

<PIPC/TAZの適応>
緑膿菌感染の関与が疑われる感染症のEmpiric therapy(例:院内肺炎)あるいは緑膿菌の関与する複数菌感染症 (例:院内発症の腹腔内感染症)の治療として。特に嫌気性菌や腸球菌との混合感染が疑われる時には有効。 レンサ球菌系に対する積極的適応はない。βラクタマーゼを産生しない上、PCGやABPCよりも効果は劣る。 βラクタマーゼ産生の黄色ブドウ球菌やインフルエンザ菌に対して有効であるがこれらはABPC/SBTやセフェム系でも有効なのであえて使う理由はない。 使用する場合は十分量を使用しなければ効果は期待できない(2.5g 6時間おきなど ただし保険承認量の倍量である)

オキサシリン(MPIPC)、ナフシリン

現在日本にはない。抗ブドウ球菌用ペニシリン製剤。黄色ブドウ球菌が産生するβラクタマーゼに対して安定性が高く、 本来はMSSAに対する第1選択薬である。髄液移行も良好。 これらに耐性の黄色ブドウ球菌はβラクタマーゼ産生ではなく、結合部位の変異で耐性獲得しているので(つまりMRSA)、 他のβラクタム薬はすべて無効。S. aureusがMSSAかMRSAか判定はMPIPCに対して感受性か否かでなされている

<解説>

(注1)
下部消化管内にはBacteroides fragilis groupという菌がいて、βラクタマーゼ産生によって耐性獲得している。 しかし、βラクタマーゼ阻害剤には阻害される→効く。
(注2)
日本ではペニシリンは“弱い”薬と思われているが、有効な菌種に対する抗菌活性はむしろ高い。ただし適切な量を適切な投与間隔で用いることが前提である。
(注3)
日本でペニシリンの評価が低い理由の一つに投与法の問題がある。 半減期が短いので4〜6時間毎に使用しなければいけないのに添付文書や保険では1日2回投与になっている。これでは効果が期待できない。
(注4)
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)はβラクタム薬の結合部位(PBP)に対する親和性の低下によって耐性獲得している。 したがって、実際はペニシリンだけでなくすべてのβラクタム薬に対して耐性獲得している。肺炎球菌は髄膜炎の重要な起炎菌であるが、 髄液移行性が良いとされているペニシリン系でも髄液中の濃度は低いため、耐性の基準はかなり厳しく設定されている。 しかし、実際は高度耐性菌は少なく、髄膜炎の以外の疾患ではペニシリン系の大量投与で治療できると考えられている。
(注5)
Enterococcus faecalisに対しては有効だが、E. faeciumは耐性菌が多い。
(注6)
βラクタマーゼ産生による耐性は通常高度耐性である。近年βラクタマーゼを産生しないABPC耐性菌(BLNAR)が増加傾向にある。
(注7)
腸球菌の中にはまれにβラクタマーゼを産生する菌がいる。しかし、これは例外中の例外と考えて良い。
(注8)
染色体性のβラクタマーゼは阻害できない。
(注9)
SBTそのものにも抗菌活性がありアシネトバクターには有効。
(注10)
染色体性のβラクタマーゼに対する阻害効果は弱い。
My God, My God,
May it never, never end.
The sand and the sea,
the jitter of the water,
the shine of the sky,
the prayer of Man.

"A Walk to Caesarea" / Hanah Senesh
( Translated from Hebrew by Shlomi Fish )

    -- Hanah Senesh
    -- Walk to Caesarea

There are more subtle ways to segment. You know those grocery coupons you see
in the paper? The ones that get you 25 cents off a box of Tide detergent if
you clip them out and remember to bring them to the store? Well, the trouble
with grocery coupons is that there's so much manual labour involved in
clipping them, and sorting them out, and remembering which ones to use, and
choosing brands based on which coupons you have, and so on, and the net effect
is that if you clip coupons you're probably working for about $7.00 an hour.

Now, if you're retired and living off of social security, $7 an hour sounds
pretty good, so you do it, but if you're a stock analyst at Merrill Lynch
getting paid $12,000,000 a year to say nice things about piece-of-junk
Internet companies, working for $7 an hour is a joke, and you're not going to
clip coupons. Heck, in one hour you could issue "buy" recommendations on ten
piece-of-junk Internet companies! So coupons are a way for consumer products
companies to charge two different prices and effectively segment their market
into two. Mail-in rebates are pretty much the same as coupons, with some other
twists like the fact that they reveal your address, so you can be direct
marketed to in the future.

    -- Joel Spolsky
    -- "Camels and Rubber Duckies" ( http://www.joelonsoftware.com/articles/CamelsandRubberDuckies.html )


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