[ Main Page ]

オランダの時間外初期診療の品質:叙述的総説

Ann Intern Med. 2011 Jul 19;155(2):108-13.

Quality of after-hours primary care in the Netherlands: a narrative review.

Giesen P, Smits M, Huibers L, Grol R, Wensing M.

多くの西欧の国々では、患者・医療者の双方にとって安全・能率的で満足のいく、時間外初期診療の組織化モデルが検討されている。 オランダでは、2000年頃、時間外初期診療が、小さなローテーションのグループによるものから、広域の初期診療医の組合によるものに変更された。 この論文は、医療者や患者の経験・安全・インシデント・診療ガイドラインへの遵守・待ち時間・電話によるトリアージの品質を含め、 オランダでの時間外初期診療についての様々な事柄の叙述的総説である。
初期診療医は、広域の初期診療医の組合に対し、仕事が減ったことで大変満足をしており、再編前に比べて満足の行く仕事ができているとのことである。 患者サイドも、電話相談・患者教育・薬局への遠さといった面で全般的には満足している。ある研究では、すべての診療のうち、 ほとんど患者に害を及ぼすことのなかったインシデントは2.4%だったとしている。また、診療ガイドラインへの遵守の割合は77%であり、 緊急の症例における抗生物質の処方や治療においてもっとも遵守率が低かったとしている。往診までの平均待ち時間は30分で、 重篤な症例の7割では目標の15分以内に到着したとのことである。また、看護師による電話トリアージにより、電話相談の割合が上がり、 受診・往診の率が下がったため、診療の質が上がったという。
オランダでの初期診療システムは、これから同様のシステムをうまく構築しようとしている他の国にとって、参考となる良い一例かもしれない。 このオランダのシステムは、初期診療医のみによる独断的医療を防ぐための、病院の救急部との綿密な連携や統合を含め、さらに発展していく予定である。

多くの西欧諸国では、時間外初期診療のシステム構築が、公衆衛生上の課題となっている。時間外診療のモデルが良いかどうかは、 患者・医療者双方にとって効率的で安全で満足のいく医療かどうかが問題点となる。 世界には、様々な時間外診療のモデルがあり、個々の診療医がそれぞれの初期診療を担当するシステムから広域の診療医の組合が担当するシステムまである。 多くの国では、それぞれを織り交ぜたシステムを採用しているが、いくつかの国では、違ったシステムを採用している。(表1)
多くの西欧諸国では、小さな地域で担当をローテーションするシステムから、広域の診療組合の方式に転換してきている。この理由としては、 ずっとオンコールでいることの必要性が重視されなかったり、多くの緊急でない受診の増加によって仕事量の増加しすぎたり、 いくつかの国では初期診療医が足りなくなったりしたことが挙げられる。また、システム改編によって、特に緊急の症例において、 利便性・品質・安全の面で時間外診療が改善することが期待されている。患者が、初期診療医を受診せずに、病院の救急部を直接受診したり、 救急車を呼んだりすると、コストが上がるし、診療の質や一貫性が保たれなくなる。
オランダでは、1960年代までは、初期診療医がそれぞれの時間外診療についても担当していた。つまり、初期診療医はほとんどの時間オンコールだったわけだ。 その後、5人から10人程度の小さなローテーションのグループを作って、それぞれの他の患者の時間外についても診るようになった。このグループは、 はじめは週末の日中のみを対象としていたが、その後、夕方や夜間についても同様に対象とするようになった。けれど、まだまだ仕事量は多く、 初期診療医同士のさらなる協力が必要であり、英国やデンマークで採用されている広域の診療医組合の形成へとつながっていく。 オランダの初期診療システムは、他の国にとって、同様のシステムを構築する際の良い一例となるかもしれない。
この論文では、医療者や患者の経験・安全・インシデント・診療ガイドラインへの遵守・待ち時間・電話によるトリアージの品質を含め、 オランダでの時間外初期診療についての様々な事柄の叙述的総説を述べる。

オランダでの時間外診療システムについて

オランダの医療システム

オランダは皆保険であり、経済的に困窮している人であってもだれでも医療を受けることができる。この保険は強制で、 「基礎保険」は包括的にすべての医療を含んでいる。多くの医療で患者の払わなければならない、医療保険の給付開始前の自己負担金は初期診療には適用されない。 このため、初期診療を受ける際には金銭的な問題は生じない。初期診療医は重要な門番としての役割があり、患者に対し、 可能であれば初期診療を提供し、必要とあらば病院の専門医に紹介する。オランダの全国民はそれぞれの初期診療医を持っており、 健康上の問題があると、まずこの医師を受診する。初期診療医は、慢性的な疾患の長期的なフォローを含め、症例の96%を治療する。 患者のうち4%のみが他の診療医を受診するが、
この割合は英国や米国での専門医受診率とほぼ同等である(それぞれ4.7%、5.1%)。
初期診療医は、病院の専門医と比べると金銭的な報奨がなく、担当患者の登録数に応じた報酬と、 外科的処置等の小さな報酬がいくらか加算されて支払われるだけである。初期診療医の組合では、固定の報酬が支払われる。 これらのシステムにより、質の高い医療を公平に行うことが出きるようになっている。表2にオランダの医療システムの重要な特徴を示す。

PCP Cooperatives

2000年にオランダの家庭医は時間外初期診療を再構築し、小さなローテーショングループから大規模な家庭医協同組合となった。 PCP協会では40~250人の家庭医が10~50万人の市民をカバーしている。
家庭医は1日24時間、週7日を通じて初期診療を行う責任がある。時間外初期診療は平日午後5時から翌午前8時までと週末である。 診療には翌日まで待つ事のできない緊急性のあるものもある。しかし実際には診察依頼の大半が緊急性のないものであり、心配からくるものである。 時間外診療はまた慢性疾患の治療も含んでいる。
今日では130人以上の家庭医協同組合がオランダ人口の90%以上に対して勤務している。PCP協会は病院内もしくは病院周辺に位置している。 時間外で健康上の問題がある患者は(PCP協会の方が望ましいが)PCP協会か病院の救急診療科を選ぶことができる。 必要があれば地域に一つの電話番号でPCP協会につながる事ができる。トリアージ看護士が病状を評価し、適切な対処法を決定する。 トリアージ看護士は患者を診なくても自宅にて様子を見る、翌日PCP協会を訪れる、すぐにPCP協会を訪れる、訪問医療を依頼する、 または病院救急科を受診するように助言することができる。トリアージのプロトコールとガイドラインには紙面タイプと コンピューターに基づくシステムがありトリアージナースを助けになっている。家庭医はトリアージナースのスーパーバイザーであり、 疑わしい症状の相談を受け、全電話をチェック、許可をだしている。医療訓練を受けたドライバーが家庭医の訪問診療を助けている。 多くの家庭医が協会に所属しており、このシステムに所属する家庭医は1時間65ユーロの報酬を受け取っている。
毎年250~1000の市民がPCP協会に相談している。その相談の多くは協会で解決され、全患者の6%は救急科に相談している。 患者は多種多様で初めての症状に直面し、その上位5つは急性の感染症(26%)、筋骨格系の問題(12.8%)、消化器系の問題(10.1%)、 外傷(6.8%)、呼吸器系の問題(4.8%)である。

Experience of Professionals

大規模なPCP協会は家庭医が直面していた過重労働の問題を解決した。PCPの調査では時間外の勤務時間がおよそ週19時間から平均で週4時間に減少した。 さらに仕事と私生活の時間を分けられるといった仕事外の面も含め、仕事満足度が向上した。 多くの家庭医が時間外診療の組織化されたモデルであるPCP協同組合に満足しており、かつてのローテーション体制に戻りたいとも、 24時間体制を終わらせたいとも考えていない。家庭医達は更なる救急科との協力体制の強化を求めている。

Experiences of Patients

オランダでは、患者の時間外診療の体験を有効な手段で大規模に評価してきた。患者は現在のPCP協同組合の時間外診療に満足していると回答している。 しかし、看護士に電話相談を受けた患者、特に電話のみのアドバイスを期待していなかった患者は、組合での面と向かっての診療を受けた患者や、 訪問診療を受けた患者に比べて満足度が低かった。この結果はイギリスやデンマークで行われた同様の研究の結果に一致する。
患者は医療サービスやPCPとのコミュニケーションに大変満足している。PCP協会を訪れる際の弊害となっているのは病気の重症度と活動性の低下といった 体幹の障害による事が多い。患者は協会までの距離がその弊害になるとは考えていない。改善面は、患者教育の質と、 コンサルトした際の医療記録の可用性と薬局あでの距離である。

医療の質

PCPによる投薬や診療の質を判断するために、オランダのPCP連合のガイドラインに基づく質の尺度を用いて機関は発展した。 80のガイドラインのうち、29は時間外診療に適応できた。2005年から2006年の間のオランダでの5つのPCP協同組織の7660人 の患者についての研究はPCPが国際的なガイドラインをよく順守していることを示した。平均順守率は77%であった。 専門医への紹介や疼痛緩和薬処方に関するガイドラインはより高い順守率であった。抗生剤や緊急のケースにおける治療では低い数値を示した。 抗生剤は42%のケースで過量に処方され、41%のケースで過少に処方されていた。現行の臨床ガイドラインは時間外や緊急の場面に則して範囲を広げる必要がある。

患者の安全性

高い患者処理能力や臨床上の条件の相違、電話トリアージのためのナースの利用、患者の既往歴についての限られた情報のために PCPでの患者の安全性は関心事である。さらに、PCPはシフト制で他の医療機関と連携する。このことは情報伝達の不連続性によって エラーをおこすリスクを増している。患者の安全性を調べるために、2009年オランダの4つのPCPで1145の医療記録の後向き研究がなされた。 患者の安全性に関する出来事、種類、原因、結果が判断された。1145の患者記録のうち、27のインシデントが認められた。 ほとんどのインシデントが不適切、または最適量以下の治療を受けた患者に関するものであった。すべてのインシデントは (少なくとも一部分は)臨床的推論における失敗、つまり持てる知識を目新しい状況に適用できないことによって起こっていた。 ほとんどは患者に対して害を及ぼしてはいないが、追加治療や入院などように、一時的な害を及ぼしたインシデントもあった。 インシデントの発生率は患者の年齢に伴って増加した。PCP組織の結果として、患者自宅への距離は患者の安全のためのありうる陰性結果に伴って増加した。 我々は、2002年から2005年までの5827の訪問診療における待ち時間について研究した。平均待ち時間は30分であった。 90%近くの患者が1時間以内の訪問を受けていた。差し迫った問題のある患者グループでは70%が15分以内のPCPの訪問を受けていた。 これらの患者のために、距離に伴って待ち時間は大いに増加したが、一方では調べられたその他の要素が待ち時間増加に有意な影響を及ぼさなかった。 緊急のケースにおいて時間を縮めるために、我々は、配分を同調し、PCPの車や救急車を使うことを提案した。 それらは同じコミュニケーションネットワークやガイドライン、トレーニングを利用することによりできる限りつぎめなく互いに補い合わなければならない。

トリアージの効果と安全性

ナースによるテレフォントリアージはPCPとの面と向かっての診療に取って代わるものである。それは電話相談の割合を増加させ、 センターへの相談と訪問診療の割合を減らした。テレフォントリアージの安全性は論点である。トリアージナースは患者を知らず、 また彼らはPCPの患者記録を閲覧することができない。さらに、トリアージナースは複雑な症例やまれな症例のために訓練されておらず、 そしてそれは緊急性を正確に見積もることを困難にさせる。オランダで模擬患者を用いて2つの研究が行われた。Giesenらによる研究では 352のトリアージの中で69%において正確に緊急度を評価することができた。19%において緊急性が過剰に表現された症例で、 緊急性が過少評価されていた。Derkxらアドバイスは58%において正しかったが、41%では過小評価されていた。
テレフォントリアージは時間外のPCP治療において最も複雑で脆弱な部分である。トリアージナースをサポートするための特別な「電話内科医」 が患者の安全性を改善すると提案されてきている。2006年のテレフォントリアージに関する電話内科医の効果に対する研究は電話相談の割合は増加し、 訪問診療の割合は減少することを示した。患者は電話による医療によりまんぞくし、それらの見込みは時としてあっていた。加えて、 電話相談の認可時間は109分から40分に減少した。患者の得たものに対する評価はまだできていない。

Discussion

オランダのPCP協同組織の質に関する研究結果は励みとなるものであった。一般的に専門家、 患者どちらも時間外診療の組織モデルとしてPCP協同組織に満足している。患者は大いに安全で、臨床ガイドラインに一致した治療を受けている。 さらに、面と向かっての接触や訪問診療は少なくなってきており、そしてそれはPCPの仕事量を減らしている。 これらのオランダの時間外診療システムの経験は立案者たちに教訓を与えるものである。
いまだに、やらなければならない仕事は多くある。緊急を要するケースにおいて15分以内に患者の家に到着することは改善の余地がある。 電話でのトリアージの質と安全性は関心を持つべきもう一つの問題点である。改善すべき点は患者に適した電話のアドバイスを与えることだけでなく、 治療の要望と予測を理解することである。トリアージの質を向上させるためにオランダにおけるトリアージに含まれる専門家のための国際的な訓練プログラムがある。 さらにますます多くのPCP協同組織が電話トリアージナースをサポートするための「電話内科医」を擁してきている。 これらの発展は電話のトリアージの質と安全性に期待できる影響を及ぼしているようにみえる。
オランダに急性期治療連携におけるある重要な発展がある。協同組織と救急部はますますひとつにまとまってきている。 これらの協力において患者に対して一つの本部を置いている。トリアージのあと、患者はPCPまたは救急部の専門家のところに送られる。 このことは、不必要に救急部を利用する患者の数を減らし、患者はもはや自分の健康問題に対する正しいサービスを選ぶというトラブルに 見舞われることもないだろう。さらに、オランダのスタンダードトリアージのような急性期治療連携のための国際的なトリアージシステムの 発展は適切なときに適切な治療を受ける機会を増やす。これらの発展は急性期治療の質を増し、ヘルスケアにおけるPCPの役割を位置づける機会を与える。 他方では、PCPは時間外業務に対して責任を持ち続けることによってこのことを達成しなければならない。重要な前提条件は十分な報酬と、 オーバーワークの予防である。
時間外診療問題に遭遇したその他の国にとってPCPは解決策なのだろうか。強いプライマリーケアシステムに伴うソーシャルヘルスケアシステムの背景において、 PCP協同組織はよい組織モデルであると証明されてきている。PCP協同組織での治療の質はよく、患者とヘルスケア専門医は満足している。 その他の国にとって、それはこれらの協同組織をつくる以上のことを含んでいる。国々がオランダのような一様で、質が高く、 患者にあったPCP協同組織を設立するために、最新の時間外診療を形作ろうとするならば、保険機構やおそらく医療文化を含んだより広いヘルスケアシステムは、 考慮されるべきものである。

I wrote them (and looking at the original ones, I'm a bit ashamed: the
"toupper()" and "tolower()" macros are so horribly ugly that I wouldn't admit
to writing them if it wasn't because somebody else claimed to have done so.)

Linus Torvalds on the Linux Kernel Mailing List in response to SCO's Linux
Kernel ownership claims.

    -- Linus Torvalds
    -- Post to the Linux Kernel Mailing List ( http://www.ussg.iu.edu/hypermail/linux/kernel/0312.2/1241.html )

The government of the Supporter will finance your travel, and you will be able
to leave tomorrow morning. We would like to inform you of the following facts:
we cannot assure your safety during this travel. Furthermore, despite your
long service at the Organization and your constructive proposal, we cannot
say, wholeheartedly or halfheartedly, that we wish to protect your safety.
Likewise, we cannot guarantee that we would not take actions that may harm
you, indirectly or in a direct manner.

We hope to see you here very soon.

"The Enemy and how I Helped to Fight It"
Shlomi Fish

    -- Shlomi Fish
    -- Shlomi Fish's Aphorisms Collection ( http://www.shlomifish.org/humour.html )


Powered by UNIX fortune(6)
[ Main Page ]