Saturday night fever
Saturday night fever: finding and controlling the source of sepsis in critical illness (THE LANCET Infectious Diseases Vol.2 March 2002)
ICUではルーティンとして体温が測定されており、発熱は日常茶飯事である。
もともと危機的な病状にある患者の場合には発熱で病状がさらに悪化する心配があるため、医師は一通り検査を行い、
エンピリックに治療を始めがちである。
しかしながら、ICUでの発熱で感染症が原因となっているものは全体の半数にも満たないので、エンピリックな治療が不必要であるということも多い。
血液検査を繰り返し、放射線や造影検査さらに侵襲的な診断手技を行うことで、ICUへの滞在期間が延び、
抗菌薬の副作用のような不必要なリスクが増えることとなる。また、抗菌薬を不用意に使うことは耐性菌を増やすため問題となる。
以下ではICUの患者が発熱した場合に、患者の状態を評価し、感染症と他の原因を鑑別して、
臨床的にも医療経済的にも適切な範囲で検査を行っていく方法について述べる。
お熱はありますか？
発熱：38.3℃以上の体温がある状態（SCCMやIDSAのガイドライン）
- 発熱の性状からみる原因
- 41.1℃を超える発熱：悪性高熱症、熱中症、薬剤熱、副腎不全、甲状腺クリーゼ
38.3℃から41.1℃の発熱：感染症もその他もどちらもありうる。
稽留熱：GNRの肺炎、中枢神経感染症、薬剤熱、サルモネラ症
比較的徐脈に白血球増多、好酸球増多、皮疹があれば薬剤熱が疑わしい
術後の発熱：3PODまでは非感染性で自然に軽快する。5-7PODに出現するものはSSIが疑わしい。
抗菌薬治療開始後10-14日での発熱：真菌感染も疑う。
- 発熱は感染症の指標としては感度も特異度も決して高くはない。
- 敗血症患者の3分の1は正常体温で、10%は低体温を呈する⇒こういった患者では致死率が高い
発熱しない理由付け：高齢者・広範囲熱傷・開放創―多くはよく分からない
発熱は免疫反応を賦活し、病原体の増殖を抑制する：熱を下げることの有益性に科学的な根拠はない。
※解熱すべき状況：41.1℃以上の高熱、心肺の予備能が低い人、最近脳卒中を発症した人、脳外傷
まず考えるべきことは？
- 重症な患者こそ系統的評価が必要。
- 身体診察：多くの情報が得られないことも多いが必須。創部・「くだ」は特に注意してみる。
これまでの病歴、輸血歴、治療歴、使用薬、採血・画像検査とあわせて、
�ヾ霑端栖機¬髪崗�態(例えば好中球減少)をはじめとしたホストの状態を理解し、�△匹譴�らい重篤かを把握し
�Ｇ�源（感染性、非感染性とも）を探る上での手がかりを見つけることが目標。
前回の感染症のエピソードがあれば、そのときの病原体は把握しておく。
※上述の評価に加え、各病院の特性も考慮に入れる。(病院の方針？、はやりや風土病、抗菌薬の感受性)
- 発熱の原因が明らかでなければ(むしろ、あっても)、まず2セット別々の場所から血液培養を行う。
- 陽性であれば、治療の必要性も高いし、診断的意義も高い。
- 血液培養のあとは、好中球減少・全身状態の悪化がない限り24〜48時間は経過観察。
- 発熱の原因となりうるものが見つかれば、追加検査・エンピリックな治療を開始することを考える。
感染症以外の原因の検索
重篤な患者では非感染性の発熱も多く見られる。術後早期の発熱、輸血直後の発熱、「くだ」の挿入や抜去に伴う発熱、
感染部位での処置はよくある原因であるが、これらは24時間以内に自然軽快する。
- 術後の発熱
- 2〜3PODまでの発熱は通常の診察以上の評価は不要であり、抗菌薬投与は行わない。
3PODまでの発熱の70％は非感染性の発熱。手術による傷への炎症反応のみで発熱は説明可能。
その他、麻酔薬により視床下部の体温調節部位が影響を受けるということもあるが治療は不要。
術後に考慮すべき感染症：誤嚥、清潔野の汚染、ガス壊疽、GAS蜂巣織炎、SSI・96時間以上熱が続く場合は感染性の発熱を疑う。
- 無気肺
- 無気肺が発熱の原因となるかは議論が分かれる。
無気肺があるからといって発熱は起こらない。
ただし、無気肺の部位からとったマクロファージはIL-1の産生量が上昇している
- 薬剤熱
- 入院患者の10％で薬剤熱のエピソードが見られる。
頻度が高い薬は抗菌薬(βラクタム系)、抗けいれん薬(ヒダントイン)、抗不整脈薬(プロカインアミド)。
診断は他の原因の除外、薬剤中止での解熱による。好酸球増多、皮疹、比較的徐脈は出ていれば疑う。
投薬と発熱の時間的な関係は証明が難しい。投与後、発熱までには数時間から数日かかり、中止後解熱までに数日かかることもある。
物質離脱も発熱の原因となる。―特にアルコール、鎮静薬、麻薬による。
7日以上ICUに滞在した患者の3分の1が離脱症状(発熱、高血圧、頻脈、発汗、抑うつ)を呈する。
- 輸血に伴う発熱
- 顆粒球、血小板を含む血液製剤で発熱がよく見られる。免疫グロブリンも発熱を起こしうる。
溶血反応：低血圧、血管透過性亢進、発熱、多尿―30分から2時間で起こる
- 腹腔と発熱
- 腹腔内の熱源は症候が少ない。腹痛、腹部膨満、麻痺性イレウスは腹腔内よりも肺炎や代謝性の原因。
非感染性の発熱の原因：肝胆道系疾患、膵炎、悪性腫瘍、腸管閉塞、穿孔、炎症…。
評価には造影CTが最適(腸管閉塞には感度86〜100％、穿孔には感度82％、偽膜性腸炎は正診率88％)。
腹部超音波も肝胆道系の評価に有効だが、腹腔内ガスや皮下気腫に弱く、検者の技量に左右される
- 無石胆嚢炎
- PEEPを用いた陽圧換気、消化管運動低下、経静脈栄養⇒胆汁鬱滞、胆嚢の虚血の危険因子となる。
診断が遅れると壊死、穿孔、2次性の細菌感染も起こる
超音波検査で診断され、PTGBDのみで90％以上は治療可能。
- その他
- 血腫、消化管出血、DVT、肺塞栓・肺梗塞、心筋梗塞、クモ膜下出血、脂肪塞栓、移植片の拒絶、甲状腺機能亢進症、副腎不全も考慮に入る。
感染性の原因の検索
- VAP
- 非常に頻度が高いが、診断の面でのgolden standardはない。
ICU患者での有病率は12〜63％。ICU入室期間が4日伸び、死亡率も2〜3割増加する。
症候(発熱、ラ音、喀痰、白血球増多、胸部X線での浸潤影の新出)は非特異的である。
胸部CTは診断の一助になる。
末梢気道から採取した喀痰の鏡検、培養は細菌学的診断の手段として重要である。
定着と感染の区別は不可能。ICU入室48時間でほとんどの患者の上気道へGNRが定着する。
BAL、ブラッシング、盲目的BALの診断手技としての可能性。
抗菌薬使用の選択(使うかどうか、スペクトラムの広さ)に関連した利益は大きい。
予後を改善するかについてはまだはっきりしない。予後因子は適切な抗菌薬を早く使えるか。
最初の治療が不適切であれば、その後に適切な治療をしても死亡率は高い。
肺炎の可能性が低くても3日間CPFXで治療してみて、改善しなければやめるという戦略
- カテーテル関連敗血症
- 留置の期間、カテの種類、カテの数、留置の手技、カテ操作の頻度がそれぞれ危険因子。
バスカテ(5/1000件/日)＞末梢カテ(0.2/1000件/日)。大腿静脈のCV(感染19.8％; 血栓21.5％)＞鎖骨下静脈のCV (4.5%; 1.9%)。
免疫が正常な人での菌血症、刺入部の炎症・膿があれば、カテーテル関連感染症を疑う。
CNS、Corynebacterium spp.、Bacillus spp.、Candida spp.の菌血症もまずカテから疑う。
カテ先培養、刺入部の膿のグラム染色、通常の血培、カテから採血しての血培が診断の手技。
刺入部感染、菌血症、IE、敗血症性血栓・塞栓があればカテーテルは抜く。
※「抗生剤ロック」という方法がある。定期的なカテ交換は感染の予防にはならない。
- UTI
- 細菌尿は30%以上の患者で起こり、そのほとんどは定着である。カテーテル挿入中の場合、膿尿も感染の鑑別には使えない。
解剖学的異常、泌尿器科的手技の前以外には培養は行う必要はない。
細菌尿の治療を行うのは、有症状例、菌血症の合併例、尿路閉塞のある例、泌尿器科的手技の前のみ。
- 副鼻腔炎
- 顔の痛み、頭痛、膿性鼻汁は通常聴取できない。正診率は25%程度。
経鼻胃管、経鼻エアウェイによる副鼻腔の閉塞が原因⇒デバイスの抜去が治療に不可欠。
評価は頭部CTが最も有用。必要なら経鼻的に穿刺し、病原体の同定およびドレナージを行う。
- 下痢と発熱
- 抗菌薬関連の下痢の25%はCD腸炎。入院患者の20%で見られるという報告もある。
下痢の発症から3週間遡って抗菌薬の使用歴を確認する必要がある。
下痢がない症例では中毒性巨大結腸症を起こしうる。⇒ロペミンは使わない。
1日2行以上の軟便があるなら2セットの便でCDtoxinをチェックする。
Golden standardは組織培養？腹部CTで偽膜を認めれば特異度は88%。
重症例ではS状結腸スコープでの偽膜の評価が感度71%。
重症例を除いて、診断がついてから治療をするので十分。プロバイオティクスの有効性は議論が分かれる。
- 創部感染
- 院内発症の感染症としては2番目に頻度が高い。
創周囲の発赤、膿、圧痛があれば診断できる⇒皮下膿瘍も作るので、創を開放してドレナージする。
抗菌薬は蜂巣織炎がある場合、免疫不全がある場合には用いるべき。
圧痛が不当に広範囲にある場合、発赤が急速に広がる場合、壊死やtoxic shockを起こしている場合
ガス壊疽、筋膜炎を疑う⇒すぐに切開、デブリードメントを行った上で、抗菌薬治療を開始する。
- その他
- 10日以上多数の抗菌薬を投与されている場合には真菌感染症を疑う。
長期のカテーテル留置ではIE、敗血症性血栓症も忘れない。
まとめ
敗血症はICUでの死因として最も多い。そのため抗菌薬開始の閾値が下がり、
敗血症が疑われたときに抗菌薬を投与してしまうのも無理がないことである。しかし過剰な抗菌薬治療は様々なリスクを生む。
エンピリックな治療はハイリスクの患者のみに限定されるべきであると考えられるようになって来た。
ICUの患者が発熱したときにこれまでのように抗菌薬を単に開始してみるというだけではなく、系統的な評価を行うことが重要である。
時には抗菌薬をやめることが最善の治療となることもあるのだから。
God considered using XSLT as the tenth plague of Egypt, but then thought it
was too evil.
-- Shlomi Fish
-- XSLT Facts by Shlomi Fish and Friends ( http://www.shlomifish.org/humour/bits/facts/XSLT/ )
I disagree with your generalization that physicists are smarter than
professors of French Literature.
Try this thought experiment. A dictator takes over the US and sends all the
professors to re-education camps. The physicists are told they have to learn
how to write academic articles about French literature, and the French
literature professors are told they have to learn how to write original
physics papers. If they fail, they'll be shot. Which group is more worried?
We have some evidence here: the famous parody that physicist Alan Sokal got
published in Social Text. How long did it take him to master the art of
writing deep-sounding nonsense well enough to fool the editors? A couple
weeks?
What do you suppose would be the odds of a literary theorist getting a parody
of a physics paper published in a physics journal?
-- Paul Graham
-- Re: What You Can't Say ( http://www.paulgraham.com/resay.html )
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