刺激に反応して反射性に下肢が三重屈曲する現象であり、Vulpian, Charcotにより発見された。 Marie, Foix, Babinskiにより詳細に臨床的研究がされている。両下肢の運動麻痺によって発現する、 脊髄の自律的な反射機構が上位の抑制から解放されて顕在化したものと考えられている。 屈曲する関節は、股関節、膝関節、足関節で、下肢三重屈曲現象とも呼ばれる。
背臥位で下肢を伸ばして脱力した状態で行う。
足背が良く、誘発領域の確認のためには、足背、下腿、大腿、腹部と上行して、上界を決める。足底は紛らわしいことがあり適さない。
刺激を受けた下肢の屈曲の程度を以下の4段階に区別し、病態の重症度に対応させる。
脊髄自動反射は、下肢が麻痺して自発的な屈曲ができない状態にもかかわらず、刺激により屈曲が生じることから注目されている。 そのため、従来は、運動麻痺があって初めて反射が生じると考えられてきた。例えば、脳卒中直後、片麻痺に脊髄自動反射を伴い、 病状の回復と共に反射が改善するとか、脊髄腫瘍で運動麻痺が進行すると共に脊髄自動反射が出現する等、 錐体路障害により脊髄が上位の抑制から解放されて、脊髄本来の下位の反射機能が顕在化するのだと考えられてきた。 しかし、錐体路性運動障害とは必ずしも関係なく、例えば、運動麻痺がほとんど見られない症例でも脊髄自動反射がみられることがあったり、 病状の回復と共に運動麻痺が改善したが、脊髄自動反射は残存した症例等がみられた。 このため、錐体外路・錐体路の両方が障害された場合に脊髄自動反射が生じるようになるのではないかと考えられるようになった。 また、筋萎縮性側索硬化症においては、錘体路、特に皮質脊髄路が変性するが、脊髄自動反射が誘発されることはまれであり、 このことも、この反射が複数の神経路の障害により生じることの裏付けとなると考えられる。
脳性の片麻痺の症例のすべてについて脊髄自動反射が見られるわけではないが、脳卒中発作直後より出現することがある。 特に麻痺側に著明に認めることが多いが、反対側で見られることもある。健側の刺激により患側の反射を引き起こすこともある。 発作後時間経過に伴い、脳腫脹等の脳障害が回復し、反射が減弱していくことが多い。 また、病状が進んでいくと、わずかな刺激で屈曲位が生じ、健側も同様の位をとるようになることがあるが、詳細はわかっていない。
筋萎縮性側索硬化症においては、脊髄自動反射が現れることはまれで、あっても極めて軽いことが多い。 しかし、脊髄を横断性に傷害する病変を持つ場合は、両下肢に反射が出現することが多い。 例えば、脊髄圧迫性病変による対麻痺、多発性硬化症の重い症例、脊髄空洞症、前脊髄動脈症候群、神経ベーチェット等では、この反射が出現することが多い。 進行性の病態では、腱反射の減弱と共に脊髄自動反射は亢進する。このことは、疾患が進行性で予後不良であることを示す徴候であると考えられている。 [4]によれば、筋萎縮性側索硬化症の中で特に下肢の運動麻痺・筋萎縮が軽い症例で、脊髄自動反射を調べたところ、すべて陰性であった。 この反射に関与すると考えられているdorsal reticulospinal systemの起始核である延髄毛様体大細胞核がALSでは侵されないため、 錐体外路の障害がなく、脊髄自動反射は生じないと考えられている。 脊髄外傷や脊髄血流障害等の脊髄ショック後に脊髄自動反射が生じてくることがある。これを腱反射の出現等と考えると、 病状の回復等と判断を誤ることがあり、注意が必要となる。
脊髄自動反射は、錐体路・錐体外路の両方の障害により生じる反射と考えられている。反射の生じる上界を適切に評価することで、 上位診断を行うことができ、画像では診断しづらい症例でも、病変の範囲を知ることができる。また、反射が見られる症例では、 病状の改善とともに反射の減弱が見られることがあり、病態・病状の把握のための一助となりえる。
[1] 平山惠造:脊髄自動反射、防御反射.神経症候学、pp.557-562、文光堂、1971.
[2] 下江豊 :脊椎脊髄疾患の神経症候学、脊髄自動反射.脊椎脊髄ジャーナル、pp.39-43 1999.01
[3] 下江豊 :脊髄自動反射発現に関する多変量解析による検討、臨床神経学、pp262-266 1995.03
[4] 平山惠造 :脊髄自動反射の臨床と病態機序に関する知見補遺、神経研究の進歩、pp763-772 1982.08
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