めまいリハビリは、前庭機能低下に対し、適切で意味のある治療方法と考えられている。めまいリハビリ・プラセボのリハビリ・ 一般的なリハビリ・リハビリなし等を比較したランダム化比較試験が数多く行われ、めまいリハビリの有効性が示されている。 コントロール群がないという問題はあるが、リハビリの度合いに応じてリハビリ前後のめまいの症状の改善の度合いが変わったという報告もある。 1940年代にCawthorneとCookseyによって提唱されたリハビリ方法が古典的なものであるが、最近になって、 前庭機能障害後に神経系がどのように改善に寄与しているかがある程度分かるようになり、 有用なリハビリ方法が提唱されるようになってきた。 この章では、前庭機能低下に対して行う治療の背景や数多くの治療方法の相似点や違いを述べる。 治療方針を決めるプロセスを示した症例報告についても追加した。
片側前庭機能障害の回復過程にはいくつかのメカニズムがある。神経細胞単位での回復・神経発火頻度の回復・前庭の順応・他の系の代償・馴化である。
神経細胞やそのレセプターの傷害はある程度回復すると考えられている。霊長類以外の動物では、 前庭の有毛細胞はアミノグリコシドによる傷害後に回復することがわかっている。それでも、ある程度の障害は残ることがわかっており、 人において前庭機能の回復に有毛細胞の回復がどの程度寄与するかはわかっていない。
非対称性の前庭障害(眼振・skew deviation・姿勢障害)は同時に回復する。これらの症候・症状は前庭脊髄・前庭眼反射の障害によって生じる。
正常時には、両側の前庭核からの神経発火頻度は平衡しているが、片側の半規管からの入力がなくなると、平衡が崩れ、頭の運動を引き起こす。
例えば、対側半規管の障害により、緩徐相が正常側から離れる向きとなる眼振が生じ、これは正常側が興奮したときに相当する。
急速相は緩徐相と逆向きに目の位置をリセットし、全体としては自発眼振となる。対側卵形嚢の障害により、skew deviationを生じ、
罹患側の目が落ちる。症状としては垂直複視を訴えることが多い。
前庭脊髄反射の障害により、下肢筋緊張の非対称性が生じ、起立が可能であっても、検査で筋電図等をはかることで臨床的に見つけることができる。
これらの症候や症状は、片側前庭障害から3~14日で改善してくる。症状の改善は前庭核からの発火頻度の改善と同時期に起こってくる。
目からの情報は自発眼振・体位平衡障害の抑制に役立つが、改善には寄与しないことが示されている。動物実験では、
明るい環境でも暗い環境でも片側迷路摘出術後の眼振の改善の度合いは同じであり、神経回路の再構築によって回復が行われていると考えられている。
対側前庭障害では、特に頭部運動で平衡障害や複視を訴えることが多い。この症状は、頭部運動に対する前庭反射の障害によるもので、
前庭眼反射(VOR)のゲインの著名な低下に因るところが大きい。片側前庭障害の急性期には、罹患側向きの頭部運動で75%程度のゲインの障害を受け、
正常側向きで50%程度のゲインの障害を受ける。前庭脊髄反射の障害は歩行障害により評価できる。一般的には、歩行時に左右に変位したり、
片側に偏奇したり、つかまらないと歩けなかったりする。体や頭の向きを変えるとふらふらするので、歩行時にあまり向きは変えない。
頭部運動により前庭からの信号の不平衡が生じ、平衡運動障害が生じやすい。
動的障害の改善には、視覚入力と体幹・頭部の運動が必要であることがわかっている。実験的には、猫や猿において、
片側迷路除去術後に暗環境に置かれた場合、VORゲインは改善しないが、明るい環境に戻すと、その時点からVORゲインの改善が始まることが分かっている。
同様に、対側前庭神経切断後に動きを制限された場合、体位平衡障害の改善が遅れることが分かっている。
VORの改善は、前庭の適応能力によるものと考えられていた。猫の場合だと、片側迷路除去術後3日程度でVORの適応が始まる。
人でも同様に早期に適応が生じる。Pfaltzにより、視運動性の刺激を与えることでVORゲインを上昇させられることが示された。
最近では、Szturmらにより、前庭適応の運動をすることで劇的にVORゲインを改善させられることが示されている。前庭適応は、
網膜上で画像が動くことにより生じる(retinal slip)。この画像の動きは、脳内で動きを最小化させるように前庭反射のゲインを上昇させる。
VORの適応としてretinal slipは重要であるが、前庭機能低下の回復のメカニズムではないと考えられている。別の経路の代償機構が回復には重要であると考えられている。
前庭障害後の回復に関わっているメカニズムとして、喪失した機能を代償する他の機構が重要になる。注視時の安定性や動的視力の強化により、
中枢の再プログラミングや遠心性の運動神経支配が生じ、頭部運動に対する予測運動が可能となる。例えば、前庭障害の患者では、
head thrustの際にsaccadeを認める。この再プログラミングされたsaccadeは自発的・反射的に起こるのには潜時が短すぎるし、正常例では認められない。
他のメカニズムとしては、先行性のslow phaseの眼運動がある。このslow phase eye movementは、予測可能なhead thrustの5ms前に生じ、
頭部の運動方向に応じた方向で中枢性に起こる。他のslow phase eye movementsは、正常側の前庭系で起こっており、VORの範囲内でhead thrustから潜時10ms以内に生じる。
姿勢安定の改善は、視覚情報や体幹情報によって代償されるが、暗いところなど前庭以外の情報があまり役に立たないところでは
歩くときにふらつくといった症状を訴えることが多い。患者によっては、暗くなったら外に出歩かないようになるといったように行動変容を起こす者もいる。
これらのメカニズムは、障害された前庭眼反射の機能を完全に代償するものではなく、歩いたり走ったりという運動に必要な20Hz程度の高い周波数には対応できず、
頭部の運動の際には注視して目を固定させておく必要がある。予測可能な頭部運動に際しては再プログラミングされたsaccadeや先行性の眼運動が役に立つが、
予測不能な頭部の運動については対応できない。他のタイプの眼運動は、必要となる周波数まで対応できない。
例えば、追視の際に必要な周波数はせいぜい1Hz程度で、角速度にして60°/secである。Saccadic eye movementはVORの障害において代償できない。
なぜなら、実際に追視している際に正常に対象物を追うことができないからである。頸眼反射(COR)も必要な周波数を持たず、
いくつかの研究においても代償時にCORが機能していないという結果が出ている。体幹深部感覚情報や視覚情報についても同様に代償できる周波数特性はない。
まとめると、前庭システムは広い周波数特性を持ち、視覚や体幹情報では補完できない。
前庭障害の患者は、平衡を保ったり複視を抑えるために頭部の運動を制限することが多いが、そのために活動性が制限されることが多く、
平衡が保たれたり複視が良くなったりすることはないので、注意すべき点だと思われる。
運動を何度も繰り返していると症状が軽減してくる。中枢性に生じてくると考えられているが、詳細は不明である。
特に指導した場合、めまいリハビリは症状の改善を促進する。そのため、前庭機能低下の患者のリハビリに際しては、
その有用性を示すことが必要となる。動物実験では、眼運動リハビリが回復を促進したという結果が示され、最終的な回復レベルも良いという結果だった。
リハビリは前庭の補償機構を促進することがわかっており、Igarashiらは、リスにおいて片側前庭除去術後の自発眼振の改善が、
回転かごありのリハビリ群とリハビリなしの群を比較した場合に差があった(7.3d/13.7d)ことを示した。猫に対して同様の実験をした研究でも同じような結果が示されている。
ヒトにおいてもランダム化比較試験がいくつか施行されており、前庭障害におけるリハビリの重要性が示されている。Horakらによる研究では、前庭リハビリ(注視安定、姿勢安定、バランス運動を含むカスタム型プログラム)・一般的なリハビリ・前庭抑制薬を慢性前庭障害の患者に対してめまい・平衡障害の面から比較して試験が行なわれた。
この前向きsingle blind試験において患者はランダムに一つの群に振り分けられ、最高6週間フォローされた。めまいは、
特定の体位や動きによって誘発されるめまい症状の持続時間や頻度を計算して評価し、症状が改善したかどうかを比較した。
体位安定性については、異なる体幹感覚下での重心動揺検査での前後のpeak-to-peakにて評価した。片足立ちでのバランステストも行った。
結果では、めまいリハビリを行った群でのみめまいの改善を認めた。同様に、体位安定性や片足立ちの時間の評価においても
めまいリハビリを行った群でのみ改善を認めた。前庭抑制薬であるmeclizineやdiazepamを投与された群では改善しなかった。
後の研究では、これらの薬の使用によりめまい症状が遷延することがわかってきた。このHorakらの研究に対して、
なにもしなかった群を使わなかったという批判があるが、もしその群であれば、治療していないことがわかるし、再度受診しなかっただろうと思われる。
ShepardとTelianらによる研究では、慢性前庭障害において、一般的なリハビリとカスタム型めまいプログラムを比較している。
この研究でもコントロール群は使われず、治療を遅らせるという代替方法をとっている。全症例はベースラインで一度評価され、
一ヶ月後にリハビリプログラムが施行される前に、再評価され、自然回復群としてのコントロール群の代替とされている。
自然回復しなかった症例について、年齢・障害の程度に応じて階層化され、2グループ間で差がないように割り当てられた。
治療開始後3ヶ月において、両グループともにめまい症状の改善を認めたが、劇的な改善か完治とした割合については、
めまいリハビリ群では85%だったのに対し、通常リハビリ群では64%であった。めまいリハビリ群においてのみ、
日常生活でのめまい症状の改善、重心動揺検査のスコアの有意な改善、動き感度の改善、前庭機能の非対称性の改善を認めた。
一般リハビリ群では、静的平衡機能のみ改善を認めた。
Herdmanらは、聴神経腫瘍の術後の急性期片側前庭障害においてめまいリハビリの有効性を研究した。この前向きdouble-blind試験では、
めまい適応リハビリが、前庭にはあまり関係のないリハビリ(頭部を固定した状態での滑動性追従眼球運動)とどの程度異なるかを比較した。
両群ともに毎日安全な方法で指導された。術後3日目からリハビリ開始とした。両群間でめまい症状の訴えに差はなかった。
前庭の発火頻度の非対称性によりめまい症状が起き、めまい症状は自然に治っていくものと考えられた。しかし、術後5日目と6日目において、
不安定さを訴える症状が両群間で異なり、めまいリハビリ群では少なかった。さらに、
歩行テストや水平頭部運動においてもめまいリハビリ群で改善を認め、歩行時の頭部運動において、コントロール群では全症例で失調を認めたのに対し、
めまいリハビリ群では半数でのみ認めた。
この研究の批判として、手術前の前庭障害や前庭の代償の程度が不明であるというものがあるが、術前の検査では基本的に違いはなかった。
もう一つの批判として、聴神経腫瘍術後の患者が前庭機能低下の症例と同じかどうかわからないというものがある。最近になって、
症例数の大きなランダム化比較試験が行われ(n=65)、その結果では、聴神経腫瘍術後のめまいリハビリと一般的なリハビリとを比べたところ、
差はないという結果だった。おそらく予後の評価方法やリハビリプログラムの違いによるものだろうと考えられているが、さらに研究の余地がある。
オリジナルのCawthorne-Cookseyのリハビリプログラムは、一般的な前庭障害に対する者で、個々の症例に特化したものではなかった。
多くは、紙を渡されて「家に帰ったらやっといてね」というだけのものだった。Szturmらは、
このCawthorne-Cookseyのリハビリプログラムについての紙を渡すだけの群と、個々の症例に特化して実際に指導した群とを比較したところ、後者で改善した割合が高かったという。
これらの研究は、プラセボ治療に比べ前庭リハビリが重要性であることを示しているが、以下の点で限界があることも同時に示している。
1.使われためまいリハビリの詳細が不明であり再施行が困難。
2.個々のグループでの詳細データが不明。
3.性別・発症からの期間・環境といった特定の要因について考察されていない。
前庭機能低下に対する物理療法のゴールは、(1)めまい症状や複視の改善、(2)歩行時のふらつきの軽減、(3)頭部運動時の複視の軽減、 (4)活動レベルや全身状態の改善、(5)社会活動レベルを以前の状態に戻す、(6)社会的な孤立状態を改善する、ということになる。 多くの場合、外来ベースでリハビリ療法を行っていくことになるが、入院治療が選択されている場合もある。重要なのは、 自宅でのリハビリを行えることであり、コンプライアンスを保つために、患者には積極的に指導する必要がある。そのためには、 リハビリの効果を理解し、治療のゴールを明確に示す必要がある。
いくつかの種類の方法が提唱されており、そのうち4つを個々で示した。基本的な部分はほぼ共通している。表20-1にそれぞれの違いを示した。
前庭の適応は、長いスパンで前庭系が入力に対して変化していくことであり、成長や発達において見られる変化や疾患や傷害後の変化において重要となる。 残存前庭機能は回復にあまり寄与しないし、視覚情報からの回転の情報によって回復を促進することは難しい。
片側前庭障害での適応リハビリにおいて以下の点が注意点となる。
●刺激を考慮する 前述したように、適応を起こさせるのに最も良い刺激は、前庭系のゲインを変えて誤差を変えさせるような中枢への刺激である。 つまり、頭部運動と視覚運動との両方が変化するのが最も良い刺激となる。視運動性の刺激(つまり視覚のみの刺激)自体も前庭系のゲインの上昇に役立つかもしれないが、 視覚情報に加えて頭部の運動が加わった方が良い。図20.4では、片側前庭障害に対する基本的なリハビリプログラムとして2種類を示している。 それぞれにおいて、頭部を動かしている間に対象物を見つめておくようにする。
●リハビリをする時間 初期の研究では、刺激を数時間以上にわたって行う方法がとられていた。この方法は、急性期ではあまり推奨されない。 最近では、適応は1~2分程度で生じることがわかっている。誤差を修正する働きが中枢で起きている間、患者は症状の増悪を感じることが多い。 図20.4を例にとれば、それぞれのリハビリは、1分間、間断なくおこなわれる必要があり、2分間までのばすことができる。
●VORシステムの適応は状況特異的である うまく回復させるために、複数の方法を使ってリハビリをする必要がある。 例えば、前庭システムの適応は周波数依存性である。ある特定の周波数に対する適応が生じた場合、ゲインはその周波数でのみ改善する。 通常の運動では、幅広い周波数にわたる頭部の運動が生じるので、それぞれの周波数に応じためまいリハビリをする必要がある。頭位を変えるのも一つの手である。
●適応は自発的な運動も重要である VORのゲインは、暗い環境であっても、壁に固定した対象をイメージするだけで改善される。 頭部運動と視覚の両方があった場合ほどではないが、このことは、精神的な努力により前庭系のゲインの改善が向上することを示唆している。 めまいリハビリ中は他のことに気をとられず集中してやるべきである。
●できる範囲でやるべきである 簡単なことをやることでリハビリを継続できるが、 多くのリハビリではなるべく難しいくらいの難易度でやるべきである。例えば、眼・頭部運動では、見ていられる範囲の速さで出来るだけ速く動かすべきである。
<rindolf> What should I do now? <rindolf> I'll work on Text-Qantor. <rindolf> It's so great not to have a job. <Zuu> yeah, if someone else pays for the food it sure is :D <Zuu> also, i dont really understand much of what you just told me :P * Zuu puts a stick into the Text-Qantor <rindolf> Zuu: Qantor == Qantor ain't no TeX/Troff oh really. <rindolf> It's a typesetting system I'm working on. * Zuu hates the name <Zuu> it makes me kinda mad actually :/ <rindolf> Zuu: :-) <rindolf> Zuu: maybe it will grow on you. <rindolf> Zuu: some people I know named a browser suckass. <Zuu> :( <rindolf> I refused to work on it. <Zuu> see that's a name! <rindolf> Zuu: heh. <Zuu> i didnt mean that btw :) <Zuu> suckass is kinda... unkind <rindolf> OK, now I should write an http://www.shlomifish.org/humour/bits/facts/XSLT/ transformation. <rindolf> I'll start from something I already have. <Zuu> But the "X ain't no <something related>" is just a lame naming convention imho <Zuu> yeah, work on some XSLT facts :D <rindolf> Zuu: just call it Qantor then. <rindolf> Without the mnemonics. <Zuu> but anyone interrested will learn that it's an abbreviation <Zuu> just by the fact that it's recursive makes me want to kill myself a little bit more :P <rindolf> Zuu: do me a break and kill yourself. <Zuu> :> <rindolf> Less Zuus - more grass for evil reindeers like me to feed on. -- What is Qantor? -- ##programming, Freenode If I am not for myself, who will be for me? If I am only for myself, who am I? -- One of Nadav Har'El's Email Signatures.