[ Main Page ]

感染症

polio eradication 先日、丸ノ内線に乗っていた時、国会議事堂前駅で、 左のような公共広告機構の広告を見かけた。 公共広告機構ではじめに思い出したのは、禁煙についての広告を 載せるべきかで以前議論が新聞に載っていたことであるが、 幸い、現在は禁煙の方向に向かっているようである。
広告を駅などに出すには、一週間だけで多くて数千万くらいかかるので、 スポンサーが必要になり、広告の内容には自ずとfilterがかかっている。 禁煙の広告を載せること一つをとっても、裏には様々な努力が あるのだろう。
大学内では、建前上、分煙ということになっているし、建物内は禁煙なはずだが、 建物の中で吸っている人もいるし、だいたい、喫煙所が建物の入口に 設置されているからほとんど意味がない。
建物の入口からは、通常の空調では 空気が吸い込まれるので、結局建物内はタバコの煙に満ちているということになる。 なんとかならないものか。ああいう人達が医療費を無駄使いしている。 喫煙者は健康保険料を倍とかにすればいいのだ。

さて、先日、 ある人 と話していた時に、誰が一番人を救えるかということが話題にのぼった。
例えば、研究で成果をあげ、 ある病への治療方法を確立するといった基礎系の面からの方法や、 実際に現場で働きより多くの人々の病を助けるといった臨床の面での方法、 国あるいは国を越えた範囲での病への対処をする行政の面での方法など 様々な方法で人々を助けられると言えるかもしれない。 あるいは、工学の進歩がなければ現在の医療はありえなかっただろうし、 MRIやCTや超音波断層はその例として挙げられる。すると、 その技術の確立のためにはもっと他の分野だって関わっている。
だから、何が一番人を救えるかという質問はあまり意味のないこと のようにも思われる。しかし、敢えて行政が最も人を救えるし、 苦しめもすると主張してみよう。

行政が人々を苦しめたことの例として最も大きなものの一つは公害であろう。 高度経済成長期には、数多くの公害が発生したが、これは 主に行政の方針に依るところが大きい。これらの公害は、 人々の声を行政が聞くように、あるいは裁判などを通して 聞くよう強制されるようになって始めて改善されてきた。
このように、行政が主導権を握ってはじめて解決されるという 問題が多いんだそうだ。じゃあ、その人は厚生省を 目指しているかといえばそうでもなくて、臨床系研究を めざしていらっしゃるということで、あまり具体的なお話は聞けなかったが、 いろいろと参考になる話ではあると思った。

さて、冒頭に挙げたポリオの撲滅について、これから必要になってくるのは ワクチンなどのための予算である。篤志家の団体によっても かなりの成果が上がってきたようだが、詳細については polio eradicationや WHOのPoliomyelitis が大変参考になる。
ちなみに、撲滅されたといわれている天然痘については、同じく WHOのSmallpox が参考になる。水疱瘡(Chieckenpox)との区別がつかないと 例えば天然痘が播かれた時に感染を広げてしまう虞がある。 天然痘の皮膚の病変については、自分は標本しか見たことがないので、 かなり心配である。
ところで、ワクチンにも色々と副作用はある。共通して考えられるのは アナフィラキシーである。
先ほどあげたpolioについては、一定の確率でワクチンの弱毒型ウイルスが強毒型に変異し、 免疫を持っていない周りの子供や親が罹患する可能性がある。
また、2005年5月30日付で、日本脳炎ウイルスに対するワクチン接種を 控えるよう勧告[pdf]が厚生省から出されたのは 記憶に新しい。脳炎ウイルスをマウスの脳で増やして不活化したワクチンなので、 不純物(脳組織)が混入してADEM(急性散在性脳脊髄炎)を起こす可能性がある。
日本にはウイルスがいることはわかっており、特に豚との接触のある場合は 注意しなければならないので、罹患して障害の残る確率と副作用の確率とを 良く考えた上で接種を受けなければならない。
例えば、医療従事者は、肝癌の原因の一つとして考えられているHBV(B型肝炎ウイルス)に感染する危険性が 高いため、起こるかもしれない副作用を考えても一般的には接種を受けることになっている。 恐らく、多くの医学部では、病院実習の前にHBVワクチンなどの抗体検査/ワクチン接種が 行なわれているのではないだろうか。教養学部2年の時は、 風疹、はしか、水痘、ムンプスといった感染症に加えて、HBVの抗体検査があった。そして、 親がHBVに罹患しているなどの理由で子供の頃に受けたHBVワクチンの 効果の残っている人以外(つまり殆んどの人)は、 半分強制的に、進学後に接種を受けることになる。
(参考:医学部学生および附属病院研修医に対する感染予防対策の実態調査)

ちなみに、天然痘は撲滅されたけれど...に続く言葉は、 「(新しい感染症が現れる上、制圧も難しく)感染症との戦いは終らない」である。



予防接種に関しては、絶対に効くとはいえない不確実性や、精製方法に問題があって 不純物(細胞等)が混ざったりしていた事故など、色々と不透明と思われる部分があって、 子供には予防接種は受けさせたくないという親が少なからず存在する。 自分のとこだけは確実に効いて、副反応はなしであってほしいという思いが なかなかかなわないこともあって、なかなか接種率が上がらない。 はしかの輸出国といわれているのは残念なことかもしれない。

Alarm clock: A device to wake people
without small kids.

	-- One of Nadav Har'El's Email Signatures.

O, what a tangled web we weave, When first we practice to deceive.
		-- Sir Walter Scott, "Marmion"


Powered by UNIX fortune(6)
[ Main Page ]