Hacking predates computers. When he was working on the Manhattan Project,
Richard Feynman used to amuse himself by breaking into safes containing secret
documents. This tradition continues today. When we were in grad school, a
hacker friend of mine who spent too much time around MIT had his own lock
picking kit. (He now runs a hedge fund, a not unrelated enterprise.)

It is sometimes hard to explain to authorities why one would want to do such
things. Another friend of mine once got in trouble with the government for
breaking into computers. This had only recently been declared a crime, and the
FBI found that their usual investigative technique didn't work. Police
investigation apparently begins with a motive. The usual motives are few:
drugs, money, sex, revenge. Intellectual curiosity was not one of the motives
on the FBI's list. Indeed, the whole concept seemed foreign to them.

    -- Paul Graham
    -- The Word "Hacker" ( http://www.paulgraham.com/gba.html )

  <Teratogen>  Two atoms are walking down the street when one of them says
               "I think I've lost an electron." The second one says "are
               you sure?", to which the first one replies "Yes, I'm
               positive".
 <mpeg4codec>  So officer Schroedinger pulls over this quantum particle
               and he says ``Do you know how fast you were going?''
 <mpeg4codec>  the particle says, ``No, but I know exactly where I am.''
  <Teratogen>  everybody has heard of Schroedinger's cat experiment
  <Teratogen>  but very few people know that Schroedinger hated cats
  <Teratogen>  with a passion
  <Teratogen>  and actually experimented on them
  <Teratogen>  he even owned a set of cat-fur gloves
  <Teratogen>  cats mysteriously disappeared around Schroedinger's
               laboratory
  <Teratogen>  and there was no Chinese restaurant close by to explain the
               disappearances
 <mpeg4codec>  Schroedinger's cat: wanted dead AND alive

    -- Jokes about Particle Physics
    -- #perl, Freenode


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http://www.mihara-waterworks.jp/sensei/index.htm
三原市水道局 
   〒723-0015 広島県三原市円一町2-3-4
 
             水コラム
 
プロフィール
中本信忠教授
(NOBUTADA NAKAMOTO)  
 
<略歴>
1965年東京都立大学理学部卒;
1968年東京都立大学大学院(理学研究科)修士課程修了;
1971年東京都立大学大学院(理学研究科)博士課程修了;
1973年日本学術振興会奨励研究員終了;
1975年信州大学助手;1981年助教授;1990年教授
 
<研究の概要>
緩速ろ過処理およびろ過池の生物被膜の生物群集に関する研究
(ろ過閉塞と藻類繁殖,生物被膜,糸状藻類繁殖の有用性,
水質浄化能,ユスリカ幼虫の捕食と藻類繁殖,藻類繁殖と水質,
藻類被膜の光合成活性,有機物 除去と生物繁殖など);
 
糸状藻類繁殖系による水質浄化の研究;
 
河川水質の季節変化および年変化の研究;
 
ダム湖集 水域生態系の研究;
 
河川水中の藻類とその起源に関する研究;
 
バイオアッセイ法による水質評価の研究 
 
 
−−−
 
 
 
 
第1回 
公共水道の始まりと繊維産業
 
 
水は生活に欠かせないものですが、古くから水道というものはありました。
それは遠くから良質の水を水路で導水して、生活に利用していましたが、その水は
病原菌などが混入することがあり、浄化処理をしていないので、必ずしも安全では
ありませんでした。
水を浄化し給水をしようとする近代水道の起源は、約200年前、英国スコットランド
のグラスゴーといわれています。
200年位前の英国は、産業革命時代といわれ、生産活動が盛んになり、家内工業から
大きな工場が都市部に建設されるようになりました。
そんな産業革命時代に、グラスゴーの郊外ペーズリーというところで、繊維を脱色
していたジョン・ギブ(John Gibb)という人がいました。
繊維を染色した後は、大量のきれいな水で布を洗わないといけませんでしたが、
近くのクライデ川の水は白濁しており、そのままでは使用することができず、困っ
ていました。
ところがジョン・ギブは、河原に湧いている水は濁りがなく澄んでいることに着目
し、この川の水を導水し、礫槽と砂槽を通せば濁りがなく透明な水になると考えた
のです。
まずギブは自分の脱色工場用に濁りを浄化する施設をつくりました。
その装置の図面を紹介しましょう。
ベーカーの本(M.N.Baker 1949 "The Quest for Pure Water")に書かれていまし
た。
 
彼が作った施設には、幅6フィート(約183センチ)の円形の沈澱池と、その内側に
同じ幅の粗ろ過用に礫槽と砂槽があり、その中に川の水を横にゆっくりと流し、
真中に清澄な水を貯めました。
その池は直径23.6フィート(約7.2メートル)でした。
ジョン・ギブが作った水は、自分の工場で使用しても余ったので、市内全域に清澄
な水を売り歩くことに…それが1804年の夏のことです。
ギブは480ガロン(1,817リットル)も入るワイン樽に詰め、2台の荷車で1日に7回、
市内中のほとんどの各家に売り歩きました。
最初は、その値段は1ガロン(1ワインガロン=3.785リットル)当たり半ペニー
(1セント)でした。
その総量は、1日に6,700ガロン(25.4トン)だったそうで、これが公共水道事業
の起源と言われています。
この水は清澄な水でペーズリーろ過方式として英国中で評判になりました。
第2回は、ロンドンでのジェームズ・シンプソンの話をお届けする予定です。
 
 
−−−
 
 
第2回
緩速ろ過のパイオニア ジェームズ・シンプソン
 
 ジェームズ・ワットが蒸気機関を改良し、効率的な生産ができるようになりまし
た。
いわゆる産業革命です。工業化が進み都市に人口が集中し、英国ロンドンを流れる
テムズ川も下水で汚れて臭い水でした。
 
 汚れた河川水から清澄で安全な飲み水をつくることができる、緩速ろ過処理が
完成したのはこの時代です。
現在まで使われている緩速ろ過処理は、英国のジェームズ・シンプソン(James
Simpson)という若者が考えだしました。
彼はろ過処理のパイオニアとして最も有名です。 
 
 ジェームズの父はチェルシー水道会社の検査長で、ジェームズはテムズ川のポン
プ場そばの社宅で1799年7月25日に生まれました。
彼は24歳(1823年)になると、父の会社で検査技師として働きだしました。
その頃のテムズ川は、下水で汚れていて市民の間で大問題になっていました。
そこで1826年(27歳)の春からジェームズは、会社に内緒で清澄な水をつくるため
の実験を始め、翌年の1827年1月には会社から許可をもらい、大がかりな実験を行
いました。
28歳になると、マンチェスター、グラスゴーなど英国の北部、スコットランドを
実際に稼働している浄水施設を調べるために、2千マイル(約3220キロ)に渡る視
察旅行を敢行し、会社には1827年11月1日に視察旅行報告書を提出しています。
 
当時の英国では、横流れ式のろ過、下から上へのろ過、上から下へのろ過の3通り
ありました。
ろ過継続日数が短いろ過池もありましたが、長いろ過池は16年間もそのままでし
た。
いろいろな施設を見て、ジェームズは次のような実験をしました。
 
 彼が試した実験ろ過装置は、2つの沈殿池と1,000平方フィート(93平方メート
ル)の砂ろ過池でした。
砂ろ過池の砂面上の水深は、15インチ(約38センチ)、
砂層は2フィート(約60センチ)その下に礫層が同じ厚さでした。
実験を8ヶ月間続けた後の報告では、14日毎に水を抜き、砂層表面を削り取り調べ
たところ、流入してくる濁りの大部分は砂面から1センチ内に捕捉され、
深さ8センチより深いところに濁り物質は何もないことを確かめました。
そこで砂面の汚れの除去は表面から1センチで十分と報告しています。
 
 その後、3年間実験をし、英国各地を見学し、1829年1月29日にシンプソンは
1エーカー(4,047平方メートル)のろ過池を完成しました。
 
このろ過池が現在の緩速ろ過池の原型です。
当時のろ過速度は、1日に2から3メートルでした。
しかし残念なことにこの詳しい図面は残されていません。
 
 
−−−
第3回
モンスタースープと呼ばれたテムズ川の水
 
 
 ジェームズ・ワットが蒸気機関を改良し、工業化、技術革新が進みました。
その一方で都市に人口が集中し、テムズ川の水は下水で汚れ、臭い水になってい
ったのです。
その様子は、ジョン・エドワードが1832年に描いた風刺画で良くわかります。
サウザク水道会社の水は下水で汚れた黒いテムズ川の水で、ロンドン市内を横切
るテムズ川の両岸の下水放流口から黒く汚れた水が流れ込んでいました。
この水を拡大してみると、不気味な生物が一杯いるといわれ、これをモンスター・
スープ(怪物が飲むスープ)と呼んでいました。
 
ジェームズ・シンプソンが活躍した時代です。
 
これまでは川の水をそのまま水路で給水するだけでしたが、何とか清澄な水にしよ
うと考えたのです。
単に砂でゆっくりとろ過するだけで清澄な水になる、現在とほとんど変わらない
緩速ろ過処理を完成させたのは、1829年です。
この清澄な水を給水している地域では、コレラなど伝染病患者の発生が少なかった
ので大評判になり、後にロンドンの水道会社では、必ず緩速砂ろ過をしなさいと
いうことになりました。
 
 テムズ川の水はどんなに汚かったかは、マイクロ・ファラデー(1791-1867 
電気のファラデーの法則などで著名)が王立科学研究所に出した1855年7月7日の
手紙に書かれています。
ロンドン橋のそばを蒸気船で航行したとき、水の色と臭気が気になり、川全体が
薄茶色で、濁っていました。
そこで、何枚かの白いカードを細かく水面下に沈むように水に濡らして、船が桟橋
に近づいたときに、数枚ずつ水中に投じました。
太陽は明るく輝いていたのに、白いカードは水面下1インチ(約2.5センチ)も沈ま
ないうちにわからなくなりました。
 
 緩速ろ過処理では、その簡易に見えるシステムのせいで汚い水を処理できないと
誤解を受けますが、そうではありません。
 事実ジェームズ・シンプソンは、このような汚い水を緩速ろ過処理で清澄な水に
していたのです。
 
Water the Book(Hugh Barty-King 1992)を参考にしました。 
 
 
−−−
第4回
ゆっくり砂ろ過で病原菌が除けていた
 
 
 シンプソンがチェルシー水道会社で、テムズ川の汚れた河川水を取水し、
ゆっくりと砂ろ過をし、清澄な水にしてバッキンガム宮殿、ウェストミンスター
寺院、国会議事堂がある区域に給水し始めたのは1829年の事でした。
 
 ロンドンでは1832年にコレラが大流行し、多数の死者が出ました。
その後ロンドンばかりでなく英国中でコレラが大流行していったのです。
広まった原因は下水で汚染された水によるものでした。
 
ロンドンで緩速(砂)ろ過で給水していた地域では、コレラなどの病気の患者が
少ないことがわかり、ロンドン市は、緩速ろ過で給水するようにと1852年に首都
水道法を通達しました。
ロンドンでゆっくりと砂ろ過をすれば原水中の病原菌が除けるという評判がたち、
ヨーロッパ中、世界中に、コレラ対策として緩速ろ過処理の浄水場が普及して
いきました。
 
 緩速ろ過処理の有用性がはっきりと証明されたのはドイツでの1892年夏のこと
です。
ハンブルグとアルトナでのコレラ患者の発生の違いは明確でした。
もちろん当時は、緩速ろ過処理後には塩素を添加することなどをしていませんで
した。
 
 当時のヨーロッパでは、夏になるとコレラが流行していました。
ドイツのハンブルグと隣接するアルトナでは、エルベ川の水を沈殿処理しただけ
で、水道水として給水していました。
ロンドンでの緩速ろ過処理の評判を耳にしていた両市では、緩速ろ過処理の導入
に取り組んでいましたが、アルトナは1892年の大流行時には完成していましたが、
ハンブルグでは未完成だったのです。
 
その結果、ハンブルグでは患者が多数出てしまいましたが、アルトナでの患者の
発生数は非常に少なく、本来なら多いはずの子供や老人ではなく、感染者には大人
が多かったのです。
 
 患者の大部分は、ハンブルグに働きに行き感染したと推測されました。
普通病気にかかりやすいのは、抵抗力の弱い子供や老人であるのに対し、アルトナ
での感染者のほとんどは、病気になりにくいはずの働き盛りの人だったのです。
 
この明白な事実は、
緩速ろ過さえすれば、コレラ菌などの病原菌が除け、安全な水道水を供給できる
との確信を世界中に広めました。
 
 日本でも江戸末期から明治の始めはコレラが流行し、安全な水は英国式の浄化
処理の水道が良いとの評判が伝わっていました。
そこで、明治16(1883)年、英国人パーマーに横浜水道の設計を依頼し、明治20
(1887)年10月17日に横浜市内の共同水栓に通水が開始したのは有名な話です。
 
 
−−−
第5回
ゆっくり砂ろ過の砂はどんな砂
 
 
三原市はゆっくり砂ろ過で水をきれいにしています。
河原で湧いている伏流水をヒントに、人工的につくるようにしたのが
緩速(砂)ろ過処理です。
 
信州大学繊維学部がある上田市の真ん中を千曲川が流れています。
そこの河原に降りると、大きな礫があり、清水が湧いています。
この水は本流が濁っても、湧き水ですので濁りません。
河原には大きな礫や小さな石、砂などがあります。
 
緩速ろ過処理の基本は砂ろ過処理です。
 
 三原市で使っている砂を顕微鏡で見てみました。
1ミリ方眼グラフ用紙の上に砂を置いて写真をとりました。
緩速ろ過処理で用いられている砂の大きさは0.3ミリから0.45ミリが標準といわれ
ています。
この砂は、日本海側の島根県江津市の川砂です。
河口から海に出たばかりのところの川砂を取り、水で洗いながら篩いで大きさを
そろえた砂です。
長い間の年月をかけて、川を流れている間に小さくなったものです。
固い砂で、この砂からは溶け出すものもほとんどありません。
 
緩速ろ過池は、この砂の厚みが約1メートルもあり、その層をゆっくりと通過させ
ることできれいになります。
 
 でも細菌の大きさは、1ミリの1000分の1です。
砂の間を考えると、どうして細菌が除けるのかがわかりません。
 
その秘密は、
この砂層の上と砂層上部で活躍する微生物、
微小生物の働きです。
これらの生物が活躍して清澄で安全な水をつくります。
 
薬品は使いません。
でも、安全のためにと、水道法で最後に塩素を加えないといけないことになって
いますので、塩素の臭いが少しはすることがあります。
 
 日本では、急速ろ過処理で水中の濁りを薬品で固まらせて沈め、その上澄みを
早い速度で、砂ろ過をして清澄な飲み水にします。
ですから、急速ろ過処理といわれます。
 
この砂ろ過槽はどうしても詰まりやすいのです。
そこで、下から水を逆に流し、濁りを取り除く処理をします。
普通は上から下へと砂ろ過をしますが、定期的に、逆に水を流します。
この時に砂が流れ出してしまうので、緩速ろ過処理用の砂の大きさよりも大きめの
約0.6ミリの砂を使います。
 
この処理では、砂をかき混ぜることになりますので、生物は活躍できません。
また、この処理では、病原菌などが漏れやすいので、最後に塩素で殺菌処理が必要
なのです。
 
 緩速ろ過処理でも、急速ろ過処理でも基本は砂ろ過処理です。
 
でも緩速ろ過処理は、生物が活躍して清澄でおいしい水ができます。
 
急速ろ過処理では、薬品で濁りを沈め、砂ろ過をして最後に塩素で殺菌をする処理
です。
 
 自然の仕組みの上手な利用は、薬も使わず安全な飲み水をつくるとして世界的
にも再認識されてきています。
 
 
−−−
 
 
第6回
上から下へゆっくり常に流れているのがポイント
 
 
緩速ろ過処理は、河原に湧き出る伏流水をヒントに考えだされました。
清澄な河川水でも、雨が降ると濁ります。
 
しかし、伏流水は濁りません。
普通は、河床を水が流れている間に、河床に潜ったり、河床にある砂礫の間を通過
したりして、濁りが除けます。
 
そこで、伏流水を人工的につくるために礫槽と砂槽をつくり、横に通過させて清澄
な水を得る工夫をしたのが、200年前の英国で繊維会社に勤めていたジョンギブで
した。
この話は、第1回に紹介しています。
この技術を縦にしたのが、第2回で紹介したジェームズシンプソンでした。
 
 緩速ろ過池の断面構造を見ますと、砂の層が約1メートル、その下は小さな砂
から大きな礫へと層状に並べてあります。
上から下へとゆっくりと水と常に流すだけの仕組みです。
入ってきた濁りは砂の上や砂層上部で止まります。
細かな砂が落ちないような工夫のために、砂から礫まで大きさを変えています。
砂層と礫層を通過した水は集水埋渠などで集められます。
 
 この仕組みは大変に賢い仕組みです。ろ過池には砂が均一に敷かれています。
ろ過が全面で行われるようにです。
もし、砂の面の一部でも水の通りが早い部分があると、その部分は入ってくる濁り
などで直ぐに詰まります。
ですから、全面で均一に行われるようになります。
入ってくる泥などの濁りは、砂層表面に均一に覆うようになります。
砂層が全面的に目詰まりしたら、砂面の上の水を排出し、砂面上部の濁り物をそっ
と取り除きます。
こうすると、砂層内部が掻き回されないので、濁りが下層へ行きにくいのです。
この方法もロンドンのジェームズシンプソンが考えました。
 
 緩速ろ過池の流れは、常に一定に流れています。
それは、自然の流れのようなゆっくりの流れでした。
 
そのため、濁りは砂層の上部から深部には入りません。
緩速ろ過池には濁りと一緒に有機物なども入ってきます。
この有機物が微小生物の餌になります。
 
ですから、緩速ろ過池の砂層上部には、いろいろな微小生物が繁殖します。
生物は餌がないところには棲めません。
 
砂層深部には餌が侵入しないので、砂層上部にしか微小生物はいないのです。
上から下への一定の流れが、緩速ろ過池のポイントだったのです。
 
 昔は、礫や消し炭、砂を樽に入れてきれいな水にする工夫をしていたことを
覚えている人がいるかもしれません。
樽の上に水を入れ、濾してきれいな水にしました。
しかし、濁りの一部がとれるだけで、飲み水として安全な水にはなりませんでし
た。
 
樽ろ過と緩速ろ過池では、根本的な違いがありました。
 
それは、樽ろ過は必要な時にだけろ過をし、樽槽中の水の流れは一定ではなく、
水が止まったり動いたりする点です。
そのため、濁りが底まで通過し、蛇口からでてきてしまいます。
飲み水として安全な水にならなかったのは、樽槽で生物が繁殖しても、樽から漏れ
てきてしまうからでした。
 
 
−−−
 
 
第7回
  緩速ろ過 と 藻
 
 
日本の野山には草や木があり、緑豊かな国です。
それは、適度な雨の水、土壌には栄養塩類があり、太陽の日射があるからです。
太陽光のエネルギーを使って植物は育ちます。
 
水の中も同じです。
 
 池や湖が緑色になるのは、太陽の光のエネルギーをつかって植物プランクトンが
繁殖するからです。
水に浮いて繁殖できるのは植物プランクトンだけです。
植物プランクトンは日の光が十分当たる水面近くでしか繁殖できません。
河川の河床に石などの礫がある河床では、礫の上に付着藻類が繁殖します。
付着藻類は、細胞の表面に粘質を出し、小石の表面に付着しています。
 
 一方、緩速ろ過池は上から下へのゆっくりとした流れが常にあり、
水深は約1メートルの環境です。
 
流れがある環境では、浮いて生活する植物プランクトンは下へ流されてしまいま
す。
礫面で見られる付着藻類は底の砂面では、水が流れにくくなり、繁殖しにくく
なります。
ろ過池の底で、流れに逆らって繁殖できる藻は、砂面上で真綿状に立体的になる
糸状の藻類のみが繁殖できます。
真綿状の藻類群集の中を水がゆっくりと流れることができます。
ろ過池では、一つの細胞の長さが1ミリメートルの10から20分の1の大きさ
の細胞がつながり、糸状になっている珪藻が優先的に繁殖します。
 
各地の緩速ろ過池や河原の水溜まりを観察すると、真綿状に最初に目立つ藻は、
珪藻のメロシラです。
他の種類の珪藻や、糸状の緑藻になることもありますが、緩速ろ過池のような
流水環境では、糸状で真綿状になる藻が目立ちます。
 
 
−−−
 
 
第8回
   ろ過池の藻が酸素豊富な環境にする
 
 藻は植物です。
太陽光のエネルギーを使って光合成をし,水中の炭酸ガスと水とで有機物をつくります。
その時に酸素が生じ,水中に溶け込みます。
光合成が盛んだと,できた酸素は,溶けきれないで気泡になります。
 
 光合成により生じたばかりの泡は100%酸素のはずですが,その泡を集めて酸素の
割合を測定したところ,約40%でした。
大気(空気)の成分比は,約20%が酸素で,約80%が窒素です。
水は大気と接しており,水中には窒素も大量に溶け込んでいます。
水中の泡の気体成分には,大気の成分比になろうとする力が働きます。
そのために,泡中の気体の酸素割合は100%ではなく,最高でも40%でした。
 
 太陽がでている日中は,光合成により酸素を生産しますが,藻は夜間,呼吸による
酸素消費があり,水中の酸素濃度を減少させます。
ところが,ろ過池から出てくる酸素濃度を測定したところ,日没後もろ過池に入って
くる酸素濃度よりその値が高いことが,夜中まで続いていることがありました。
光合成ができない日没後も,酸素生産があるような現象は,日中に生じた気泡が,
その原因でした。
40%の酸素割合の気泡から,日没後,水中に酸素を溶け込まし,20%になろうとして
いたのです。
気泡ができることは,夜間もろ過池内を酸素豊富な環境にしていたのです。
 
 夜間は,藻が呼吸で酸素を消費します。
泡は気体で浮力があるので,ろ過池の底で繁殖した藻類被膜は,気泡の浮力で水面に浮
き上がるのです。
ろ過池の隅には,浮いた藻を自動排出する仕組みがあります(ろ過池の砂層表面で繁殖し
た藻は,光合成により生じた気泡の浮力で水面に浮き上がり,スカムを排出する越流管か
ら自動的に流出する仕組みがある。)。
藻がろ過池から流れ出るので,酸素消費をする藻が無くなり,ろ過池での酸素消費が少
なくなります。
また,見た目は汚らしい水面に浮いている藻も少なくなり,イメージも良くなります。
 
 ろ過池の藻が浮き上がった後の砂層表面は,砂地が見えます。
溶けきれないほどの溶存酸素が豊富なときに気泡が生じますので,剥離した跡にはすぐに
気泡が生じます(光合成が盛んだと,藻類被膜は剥離するが,剥離した砂面には気泡が生
じる。剥離面から濁りが砂層の中に入りにくいことがわかった。)。
藻類被膜が発達すると光合成が盛んになります。
底に近いところは酸素が溶けきれないほどになっていたのです(砂層表面に生じた気泡を
自作の採取道具で集めて気泡中の酸素を測定したら,高濃度であった。)。
浮いている藻類被膜が流れ去るので,太陽光が底まで十分届くようになり,光合成が盛ん
になるのです。
 
 
−−−
 
 
第9回
   生物の大きさ
 
 
 緩速ろ過処理は,生き物が活躍しているので清澄な水になります。
濁りがなく,細菌やウイルスがほとんどいない,安全でおいしい飲み水になるのです。そ
れは,緩速ろ過池の砂層上部で活躍するいろいろな大きさの動物がいるからです。顕微鏡
でないと見つけられないほどの微小の動物がたくさん活躍しています。生き物の大きさと
その生物が食べるものの大きさを考えてみましょう。
 
 人間の大きさは,約1.5メートルです。人間が食べるもの,口の中にいれるものの大
きさを考えてみましょう。ご飯粒の大きさを考えてみると,人間の大きさの100分の1か
ら1000分の1の大きさです。
 
 私たちは,おいしいと思われる料理を食べます。でも,まだ歩き始めたばかりの赤ちゃ
んは,口に入るものは何でも口に入れてしまいます。お腹がすいているなら,落ちている
ものでもとりあえず口に入れてしまいます。刺激があり,ものすごくまずいものは,吐き
出します。お腹に入れたもののうち,消化できるものは消化しますが,消化できないもの
は糞として排出します。
 
 魚はどうでしょうか。水槽で泳いでいる金魚を観察すると,底に落ちているものを小石
と一緒につついて何でも口に入れています。その大きさは,魚の大きさの数十分の1から
100分の1程度です。
 昆虫の中には水生昆虫といわれる幼虫がいますが,流れてくるものや,付着しているも
のを何でも口の中に入れます。ろ過池にはこれらの他に,ワムシやミジンコといわれる小
さな節足動物もいます。また,砂層の上や,砂層上部の砂の間には,水ミミズや線虫など
もいます。
 大きさが,1ミリメートルの10分の1から100分の1くらいの大きさの原生動物もい
ます。ゾウリムシの仲間です。身体の回りには繊毛があり,自由に水中を動きまわること
ができます。これらの小さな原生動物のエサの大きさも自分の身体の数十分の1か,それ
よりも小さな大きさの粒子です。その大きさは,1ミクロンとかそれよりも小さな粒子で
す。その大きさは,細菌やウイルスの大きさです。このような微小動物が活躍するからこ
そ,緩速ろ過処理では病原菌が除けるのです。
 
 しかし,微小動物が捕捉し,口に入れたものを直ぐに分解をするかというと,動物の身
体の中で,必ずしも完全には分解できないことがあります。動物は,身体に入れて,消化
できるものは消化しますが,消化できないものは糞塊として排出します。口に入れてから
身体から排出するまでの時間は,人間でも半日程度です。小さな動物は,数十分程度しか
身体の中に留まっていない場合が多いのです。
 
 このような短時間では,消化分解をしようにもできない場合が多いのです。動物は濁り
物質を集めて糞塊にする役割,団粒構造にする役割があるのです。この塊の中では,細菌
などの微生物が活躍しています。糞塊の中は酸素不足になり,発酵といわれる現象が行わ
れます。酸素不足になると,酸素がある状態では分解できないものまでも分解されてしま
います。動物の身体の中では時間が短すぎて未消化,分解できないものが体外にだされた
糞塊の中で分解します。
 
 細菌やウイルスが緩速ろ過処理で除かれるのは,微小動物が活躍するからです。緩速ろ
過池では,このようないろいろな動物が活躍していますが,ろ過池を通過して下には出て
きません。動物のエサは上から来ます。動物にはエサが必要ですから,エサがくる砂層上
部にしかいないのです。微小動物でも流されないような大変に遅い流れなのです。
 
 緩速ろ過のことを英語ではスロー・サンド・フィルターといいます。緩速ろ過のろ過速
度は1日に5メートルの速度が標準といわれます。その速度は,1時間に20センチメー
トル,1秒間に約50ミクロン(マイクロメーター)です。繊毛虫の大きさは数十ミクロ
ンから数百ミクロンです。動物は,1秒間に,自分の体長の数倍は,簡単に走ることがで
きます。ゆっくりろ過とは,細菌などを捕食する繊毛虫の大きさの微小動物が流されない
速度だったのです。
 
 
−−−
 
 
第10回
   藻の発達と水深
 
 
 緩速ろ過処理は,生物が活躍して水質を浄化します。生物が多いということは,浄化力
が大きくなるのです。生物被膜や砂層内の上部に,微小動物がたくさん生息していると良
い状態で,ろ過池に濁りが入っても,砂層の上に,生物被膜が発達していると,砂層は目
詰まりしにくいのです。これは微小動物には食糧が必用で,入ってきた濁り物もエサと一
緒に食べてしまうからです(9回:「生物の大きさ」を参照)。
 
太陽の光があり,水の中に栄養塩が多少でもあると,ろ過池の砂層の上で光合成生物が繁
殖します。ゆっくりの流れがあるので,糸状,真綿状に成長する藻が繁殖します。この藻
が光合成をして酸素を水中に供給するのです。藻は動物のエサにもなっています。
 
藻が繁殖し,それが腐って水道水に臭いをつくるといわれたことがありました。しかし,
緩速ろ過処理では,常に酸素を豊富に保つ仕組みがあります。第8回に解説しましたが,
繁殖した藻は越流管から排出される仕組みが備えてあります(8回:「ろ過池の藻が酸素
豊富な環境にする」を参照)。盛んに藻が繁殖することは良いことです。ろ過池で藻が繁
殖するのは悪いという考えは,急速ろ過処理での考えでありました。
 
ところが,急速ろ過処理での藻が悪いという考えを元につくられたろ過池は,水深は深く,
底まで光を届かないようにしていました。そのため,例え底で藻が繁殖しても,水圧のた
めに気泡が生じにくく,藻類被膜は浮き上がりませんでした。このようなろ過池では,藻
類被膜の発達が悪く,繁殖した藻は直ぐに動物に食べられやすいようです。藻の発達が悪
いろ過池は濁った河川表流水が入ってくると,砂層表面を覆ってしまい,目詰まりしやす
いようです。
 
水深を浅くすると,底まで光が当たり,藻の発達が良く,砂層上の藻類被膜は真綿状にな
ります。藻類被膜が発達し,砂層内で微小動物が活躍するようになると,濁り物質が入っ
てきてもろ過池は目詰まりしにくくなります。水深が浅いと光が底まで十分に届き,光合
成が盛んになります。水圧が小さくなるので,気泡も生じやすくなり,藻類被膜は真綿状
になりやすいようです。浅いろ過池で藻類被膜が発達すると,濁り物は藻類被膜に引っか
かり,残りが砂層へと到達するようになります。また,藻類被膜と砂層表面では,微小動
物が活躍し,濁りを集め糞塊にしてしまうので,目詰まりしにくくなります。河川水が濁
り,目詰まりをするといけないからと,予め砂層表面を削りとり,藻類被膜を取り除くと
生物が少なくなるので,逆にろ過池は目詰まりしやすくなります。
 
日本の河川では,何日も濁り水が流れるということはありません。藻類被膜は,濁りで一
時的に覆われても,直ぐに光合成により気泡が生じ,藻類被膜はふっくらとし,濁りと一
緒に剥離し越流します。また微小動物も活躍するので,ろ過池を通過した水は清澄な水の
ままです。
 
冬は水温が低いからろ過池では藻類被膜が発達しないと思われています。ところが,長野
県上田市を貫流する千曲川の河原の水溜まりを見ますと,気温が零下の寒さでも伏流水が
湧き出す浅い水溜まりでは,盛んに糸状珪藻メロシラが繁茂していました。濁りがなく,
ゆっくりと流れている浅い水溜まりの中では,光合成生物の藻は繁殖できるのです。水面
が氷るような寒さでも水中では藻も微小動物も活躍しています。
長野県の千曲川の河原で伏流水が湧き出す水溜まりでは,雪が土手にあるような寒さでも
珪藻が真綿状に繁殖し,水面に浮いている。
冬の水溜まりに浮いている藻は,糸状の珪藻メロシラである。光合成が盛んで,水深が浅
いので気泡が生じやすく,たくさん付着している。
ろ過池を浅くし,藻を繁殖させ,生物群集を増やすことは生物による水質浄化を促進させ
るので良いことのようです。実際のろ過池での砂層上の水深は,約1メートルの場合が普
通です。これは,事故があり,取水できない事態に備え,ろ過池が貯水槽の役割もさせよ
うとしているからです。
 
 
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第11回
 生物が繁殖するろ過池では、濁りは砂層に入らない
 
 緩速ろ過池には光が当たり,河川からの栄養分が入ってきます。
このような環境では光合成をする藻が繁殖します。
上から下へのゆっくりの流れがある,ろ過池の底の砂層上には,糸状の藻類が繁茂します。
この藻類被膜にはろ過池に入ってきた濁り物質がひっかかり,濁りを砂層へ行かないよう
にする役割もしています。
 
 河床の伏流水を原水とするなら,濁りがないので,ろ過池の砂層は目詰まりしません。
河川表流水を取水している浄水場では,生物が分解できない粘土鉱物などが入ってきます。
そこで,このような物質がろ過池の砂層表面に蓄積し,ろ過抵抗が少しずつ高くなり,目
詰まりをすることがあります。
そこで,ろ過池が目詰まりする前に定期的にろ過池の水を抜き(長い間ろ過継続をした後
に,砂層面上の水を排出している状態のろ過池。),砂層表面に蓄積した泥成分を取り除く
ことをします (砂面の汚泥を取り除くための「削り取り」作業。砂面上を薄く取り除く。
削りとった汚泥と砂は,洗ってまた使う。)。
砂面の「削りとり」作業と言われます。
 
 この時に,砂層上部の砂を手製の道具で採取し(砂面上の汚泥除去のために水を抜いた
ときに砂層上部を手製の道具で採取。),砂層上部の状態を見てみました(砂層上部の砂の
状態。砂面上に汚泥(藻類被膜と泥)が,砂の中には泥が入っていない。少し茶色に変色
しているのは数センチ。少し茶色になっている部分に微小動物や細菌が活躍している。)。
砂は,上部の数センチしか汚れていません。
茶色くなった部分の砂粒の表面には,顕微鏡でしか見えない微小動物や細菌がいます。
砂層深部の砂は変色していません。
生物が盛んに活躍しているのは,砂層上部の数センチです。
目詰まりは,砂層表面に粘土鉱物などが蓄積するからなのです。
 
 砂層内部に濁り物は絶対に侵入しません。
少し茶色に変色した部分に微小動物や細菌が活躍していますので,この部分を取り除いて
はいけないのです。そ
のために,できるだけ薄く削り取ることをする必要があります。
砂層上部を拡大して見ると(砂層上部を拡大してみると,砂層内には泥が入っていない。
砂層が固くもなっていない。),砂層の間に泥などがほとんど侵入していないことがわかり
ます。
砂層上の茶色の部分は,藻類被膜です。
水を抜く前は,ろ過砂の上で真綿状の藻類被膜になっていたのです。
 
 群馬県高崎市水道局若田浄水場。
この浄水場の原水は,河川表流水です。
雨が降り濁った河川水が浄水場に入ってくることがあります。
それでも沈殿池で大きな泥を沈めるだけで緩速ろ過処理をしています。
濁った水がろ過池に入ってきても,ろ過速度を調節するバルブを操作しないようにしてい
ます。
砂層面に藻類被膜ができ(第7回を参照),砂層内に微小動物がいる場合は,目詰まりし
にくく,例え一時的に目詰まりしても,砂層内の微小動物が活躍し,目詰まりは自然と回
復することがわかりました。
そのため砂層面で藻類が繁殖しやすいように,できるだけ水深を浅くしました(第10回
を参照)。
繁殖する藻は,酸素を豊富にするだけでなく,ろ過池で活躍する微小動物のエサにもなっ
ていたのです。
砂層内の微小動物が,安心して活躍でき,流されないような状態にするのが緩速ろ過処理
です)。
緩速ろ過池で活躍する藻類や動物の立場になって考えると理解できます。
 
 
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第12回
 ろ過池が緑色の藻でいっぱいになる
 
 河川水を取水している浄水場では,雨が降ると河川水が濁り,どうしても泥がろ過池に入ってしまいます。
ろ過池の砂層の表面に泥がたまるので,時々その泥を削りとらなければいけません。
河川水の濁り対策のために,濁りを沈めるための沈殿池が大きい場合,ろ過池は目詰まり
しにくいので長く使えます。
また,河原に埋設した集水管で伏流水を取水する場合,濁りが無いので,ろ過池はほとん
ど目詰まりをせず,非常に長く使えます。
 
 ろ過池で最初に繁殖する藻は,珪藻です。
珪藻は緑色の葉緑素の他に,赤茶色のカロチノイド色素も含まれているので,茶色に見え
ます。
珪藻は珪酸質の殻がありますが,水生昆虫の幼虫や微小動物のエサとして最良で,動物が
珪藻を食べると簡単に消化されてしまいます。
ろ過池では珪藻が食べられてしまうと,動物が食べにくい糸状の緑藻が繁殖しだします。
長くろ過を続けられるろ過池は,緑色の藻が繁茂するのが普通です。
茶色の藻から,緑色の藻にかわるのは,茶色の藻を食べる動物が増えるからなのです。
 
 動物は変温動物で,水温が低い冬は活動が鈍くなり,ろ過池は茶色のままであることがあります。
しかし,水温が高くなると動物が活躍し,茶色の珪藻を簡単に食べてしまうので,緑色の
藻に遷移してしまいます。
茶色の藻よりも緑色の藻の方が植物というイメージがあり,親しみがありますが,光合成
をし,入ってくる栄養分を吸収し増えるという意味では同じです。
食べられる動物は違いますが,動物のエサになるという意味では同じことです。
 
 緑色の藻は緑藻で,細胞の外側には固い細胞壁があります。
普通の動物は,簡単にはこの細胞壁を壊して消化できないので,長くろ過を続けると緑色
の藻が繁茂してきます。
 
 金魚の水槽が緑色になるのは,金魚が緑色の藻を食べても消化できないからです。
緩速ろ過池も緑色になるのは,動物にそうは簡単に食べられないからなのです。
糸状の珪藻と比べて,細胞の大きさも大きく堅固です。
でも,タニシやカワニナのような貝類は,緑色の堅固な藻を平気で食べ,消化できます。
それは,軟体動物には丈夫な臼のような歯があるからで,堅固な緑藻も消化できるのです。
畑の野菜をナメクジやマイマイが食べてしまうのと同じ現象です。
 
 ろ過池が茶色の藻が繁殖しているときも,緑色の藻が繁殖しているときも,ろ過池から
でてくる水は「おいしく安全な」水です。
砂層上部には,微小の動物が活躍しているからです。
森林の樹木の下には落ち葉があります。
その落ち葉の間には,いろいろな動物が生息していますね。
落ち葉の下の土は小さな団子状になっていて,ミミズなどの動物や,顕微鏡でみないとわ
からないような,微小な動物もいます。
緩速ろ過池の砂層上部と同じような構造で,いろいろな動物が活躍しているのです。
植物,動物,細菌などが活躍する層を通過して,山の清水ができますが,緩速ろ過池も
同じような現象が行われています。
 
 緩速ろ過処理は,自然界の生物現象の上手な活用で,化学薬品を一切使わないで,
おいしく安全な飲み水にできる方法です。
ろ過池に入ってくる水に濁りがないときは,最初に糸状になる珪藻のメロシラが真綿状に
大繁殖をする。
水面に浮いた藻が効果的に排出されないときは,ろ過池で腐ったりする。
また珪藻は動物のエサとして最適で,食べられると糸状の緑色の藻になる。
 
ろ過池を使い続けると,水面に浮いた藻と一緒にユスリカの脱皮殻が多数みられること
がある。
ユスリカは刺さない蚊として有名である。
珪藻などを食べて増える。
ユスリカが増えると,砂面では糸状の珪藻は食べられ,食べられにくい糸状の緑藻が繁殖
してくる。
そのような時にろ過池の水を抜いてみると,砂層上部にはユスリカの幼虫が多数いるのが
わかる。
目立つのは,ユスリカの幼虫。
糸状珪藻が食べられても,砂層上部には多数の微小動物が活躍するので,ろ過池は目詰ま
りもしないし,ろ過した後の水は濁り物質はほとんどいない良質の水道水である。
ろ過を長く続けられると,ろ過池に浮いている藻は緑色になることが多い。
 
緑色になった状態のろ過池の水を抜いてみると,糸状の緑藻であるのが良くわかる。
 
緑色の藻は,簡単に手で持ち上げることができる。
アオミドロ,シオグサ,サヤミドロ,アミミドロなどの糸状になる緑藻である。
このような糸状の緑藻は,水田でもよく見られる。
ろ過を長く続けると,緑色の藻も食べることができるタニシ,カワニナ,シジミなどの
貝類もろ過池にはでてくる。