Cigarette: tobacco wrapped in paper, fire
at one end, and a fool at the other.

	-- One of Nadav Har'El's Email Signatures.

The thing is, I don't actually enjoy debugging my own machines. I _much_
prefer having other people debug _their_ machines, and fixing my machine in
the process. So I didn't want just something that worked on the Mac Mini, I
wanted something that works _universally_, so that hopefully people who are
even crazier than me will waste _their_ time trying to get these machines
working.

Linus Torvalds in [an Email message](http://lwn.net/Articles/188123/)

    -- Linus Torvalds
    -- Email Message ( http://lwn.net/Articles/188123/ )


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     おいしい水道水
 
   講演会が開催されました。
 
 市町村合併の流れが進んでいますが、自治体財政の課題は山積みです。これから
は、今あるものをいかにうまく使いこなし、低コストで自然の力をいかに利用して
いくかが大切な時代になります。都会に本社のある大手業者に頼らない、地元小規
模業者の技術で可能な事業を模索していかなければなりません。そこで財政課題に
対する回答を模索する手段の一つとして、次のとおり研修会がありました。
 
 今回お話をしていただいたのは、信州大学繊維学部応用生物科学科教授
中本 信忠 様です。
 安全でおいしい水道水と生物、現代に通用する古い技術の再認識、緩速ろ過の話
です。
 現在、「生でおいしい水道水」というタイトルで出版し、緩速ろ過処理
(slow sand filtration)の素晴らしさを一般の方にお知らせしています。
詳しくお知りになりたい方は、この本をお読みください。築地書館から出ています。
ちなみに2,000円です。
 
 
1 日時  2004年2月8日(日)13:00〜
 
2 場所  後志支庁裏 車庫棟2階 4号会議室
 
3 内容 
   安全でおいしい水道水と生物
 〜現代に通用する古い技術の再認識〜(緩速ろ過の話)
 
 信州大学繊維学部応用生物科学科 教授 中本信忠
      ホームページ: http://water.shinshu-u.ac.jp/
 
略歴 
1965年東京都立大学理学部卒;1968年東京都立大学大学院(理学研究科)修士課
程修了 ;1971年東京都立大学大学院(理学研究科)博士課程修了;1973年日本学
術振興会奨励研究員 終了;1975年信州大学助手;1981年助教授;1990年教授
 現在、「生でおいしい水道水(築地書館)」を出版し、緩速ろ過処理の素晴らし
さを皆に知らせようとしていますslow sand filtration。バングラデッシュでの砒素汚
染でも緩速ろ過で安全な飲み水をつくろうとしています。
 
 「生でおいしい水道水(築地書館)」
               ・・・本の帯封のキャッチフレーズ
 いつから水道水をあきらめ、ガソリンの2倍もする水を買い求めるようになった
のか。安くておいしい水道水ができないのは、水道原水の汚染が原因ではなく、水
処理の方法に問題があったからだった。水道水の緩速ろ過技術研究の第一人者が書
き下ろした、安く、おいしく、安全、と三拍子そろった「水道水」復活の」技術。
 
 日本は軟水で安全な水が豊富なので、生水を飲む習慣がある。塩素の臭いは安全
と言われ、それを信じ、魚が死ぬ水を日本人は腸管の中に入れてしまった。とんで
もないことだ。欧米では塩素で殺菌消毒した安全といわれる水をほとんど飲んでい
ない。欧米は硬水が多いので、細菌学的に安全でも生水を飲まない。食器洗い、洗
顔、洗濯、歯磨きなどに清澄で安全な水をほしかった。
 緩速ろ過処理なら飲みたくなるおいしい水をつくるのは簡単です。皆が声をだす
ことです。
 ゆっくりと流れがある環境では、糸状形態の藻類が繁茂します。流れに逆らって
繁茂します。光合成生物は酸素を生産しますので、酸素が豊富な環境にし、好気的
生物の活動をしやすいようにします。糸状構造、生物がつくる織物構造がキーポイ
ントでした。これも繊維学部の狙いと関係がありました。緩速ろ過処理はゆっくり
の生物処理で、生物群集とその生態系の上手な利用です。
 
 
     講演内容 ( 聞き取りメモです )
 
 長野県上田市の浄水場は緩速ろ過です。
1池(780m2)で1万人分(3,744t)の水道水を供給できます。
緩速ろ過は効率が古くさく悪いイメージがありますが、そんなことはありません。
効率がいいのです。
 
この前、私の本を見たと言うことで、山口県岩国市(100% 急速ろ過)の水道
局長から電話がありました。
自分の飼っている犬は水道水を与えても飲まないが、雨水は飲む。
塩素が入っている水は飲まない塩素。犬は本能で塩素を毒と認識している。
犬が飲まない水を供給するのはおかしいと思い、水道水についての本をいろいろ読
んで、「水道水に塩素はいらない」と書いてあるのは私の本だけだったということ
で、緩速ろ過について詳しく教えてほしいという電話でした。
 
 
 大きな都市は今、急速ろ過が主流です。
 札幌市も急速ろ過です。(藻岩など)
 1945年以降、日本中の水道水が塩素臭い水になりました。
 米軍の野戦基準(高濃度塩素添加)のままの状態が今日まで続いています。
 
 1972年、オランダ アムステルダム水道(ライン川)で塩素投入でホルマリ
ンができることが報告されました。
1974年、アメリカ ミシシッピ州で発ガン性の疫学調査が行われ、水道水中の
有機物(腐食物質)と塩素が関係していることがわかり、塩素処理が原因で発ガン
率が高まることが報告されました。
 
 
 緩速ろ過の歴史についてお話しします。
英語でslow sand filtration と言います。
日本で言うと、江戸時代、1804年にスコットランドで緩速ろ過は始まりました。
産業革命の時期で繊維産業が栄え、染色・脱色工程に大量のきれいな水が必要でし
た。
川の水をゆっくりと砂ろ過すると簡単にきれいな水ができることに気づき、緩速ろ
過が始まりました。
工場で使っても大量に余ったので、ワイン樽に詰めて街で売り歩きました。
これが水道の起源と言われています。
 
 また、緩速ろ過は伝染病にならないということもわかりました。
ドイツでコレラが流行したとき、緩速ろ過で飲み水を供給している街ではほとんど
コレラ患者が出ませんでした。
 
 日本では、明治から横浜、函館、小樽、呉など軍港で緩速ろ過が採用されました。
国にとって重要な都市を優先的に病原菌から守ろうとした背景がありました。
 
 アメリカでも緩速ろ過が採用されましたが、河川の濁り(岩石が風化した細かな
粒子)が砂ろ過池を頻繁に泥で詰まらせました。
そこで、1885年、薬品(硫酸アルミニウム)で濁りを固め、最後に塩素で殺菌
消毒して細菌学的に安全な水道水をつくる方法を考えました。
 いわゆる急速ろ過 rapid sand filtration です。
新しい技術であり、rapid速いという名前がカッコ良かったので、人々はこの方法
を好んで採用しました。
 
 この方法は薬品会社がもうかる方法です。
 急速ろ過は薬品を大量に使い各種機械を使いこなさなければならないので薬品業
者・機械業者が儲かりますので、水道専門のコンサルタントに聞けば急速ろ過・膜
処理を勧められます。
 急速ろ過の浄水場のパンフレットは大変立派です。
 コンサル業者がサービス(無料)で作ってくれます。
 急速ろ過は効率がよいと書かれています。
 しかし効率がいいのはろ過池だけのことで全行程の効率ではないのです。
当たり前かもしれませんが、業者が作るパンフレットに自分たちの都合の悪いこと
は書きません。
 
 緩速ろ過は一度作ると、100年以上持つので(アイルランドでは140年間使
っている所もある)経費(コスト)はあまりかかりません。
 自然の仕組みを利用するだけなので維持管理も楽です。
 業者は勧めません。お金がかかりませんから。
 
 
 上田市の浄水場を見て緩速ろ過の研究をして「けい藻が繁茂すると良い」と発表
したら、「そうじゃない所もあるので、いろいろな所を見た方が良い」とアドバイ
スされたので、いろいろな緩速ろ過の浄水場を世界各国を見て歩きました。
 見て歩いた結果、緩速ろ過にはその土地の「季節性」(気温、天気)に左右され
るので、工学系の人には理解できない要素があることがわかりました。
 急速ろ過は工学の人でも理解できます。
 
 1974年、日本でもトリハロメタン騒ぎがおき、塩素投入に不安が出てきまし
た。
 東京ではこの頃、ろ過池に塩素を入れた緩速ろ過を行っていました。
 生物処理の緩速ろ過に生物を殺してしまう塩素投入はまちがいです。
 
 ヨーロッパでは、茶色の水に塩素を入れると発ガン物質ができるため、塩素投入
はやめました。
 
 生物処理(緩速ろ過)とはどういうメカニズムかというのをお話しします。
微生物が濁り(細菌、ウイルス)をエサとして食べます。
消化できるものは消化してできないものは糞(ペレット)として排出されます。
糞は嫌気的になり発酵がおこり、分解されなかった有機物も分解され、再び
微生物のエサになります。
これが繰り返され、有機物がない(AOCが低い)水になります。
濁度が低い水になります。塩素殺菌は必要ありません。
 
 AOCとは、水中の有機系炭素のうち微生物がその増殖に必要な栄養源として
利用できる有機性炭素のことです。微生物増殖の指標として用いられます。
 AOCがゼロなら微生物は生存できないので、塩素消毒も残留塩素も必要ありま
せん。長期間冷蔵庫で保管しても水が腐りません。
 
 水質基準では濁度 0.1度以下を守ることが推奨されています。
急速ろ過はこれを守るだけでも大変な作業です。
緩速ろ過なら、悪くても濁度0.01度です。
簡単にきれいな水を作れます。
 
 ビール会社の宣伝文句に「天然水仕込み。水道水は使っていません。」というの
がありますが、日本での水道水は「塩素臭くてダメ」というイメージだからです。
 
 水道法のトップは、塩素投入を変えたいと思っています。
 でも、それを言えません。
なぜ、緩速ろ過の宣伝をできないのかというと、研究費が出るのは問題の多い急速
ろ過・膜処理です。緩速ろ過には何の問題もないので、研究費は出ません。
 
 では、なぜ私が緩速ろ過の宣伝が出来るのかというと、今現在のヨーロッパ・
アメリカの主流は、塩素無添加・緩速ろ過だからです。
 皆さんが世界の主流を知ったとき、塩素無添加・緩速ろ過に変わることを業界も
うすうす感じているからです。
 
 人は塩素臭い水を安全な水と教育され飲んできました。塩素は毒です。殺菌剤、
脱色剤、酸化剤です。強い水泳選手が茶髪になるのはプールに入れる塩素のためで
す。
 金魚が死ぬ水、野生動物が飲まない水。それは塩素臭い水です。水族館にいる
ペンギンやイルカは塩素臭い水で大丈夫です。肺呼吸しているから。塩素臭い水を
飲んでいません。
 大量に病原菌を直接体の中に入れなければ、大丈夫です。
無菌の料理はありません。
 
 ヨーロッパでは、塩素を義務づけている国はありません。
カルキ臭を水道水で感知されると、需要者からの苦情が来て、水道事業体自身の信
用がなくなるからです。
 昨年8月、北欧のレストランに行ったら、ピッチャーに入れた水道水が出てきま
した。「自分の家でも水道の水を飲むのか」と尋ねたら、「もちろん」とウェイト
レスは答えました。
 ロンドンの水道水は、100%緩速ろ過による水道水です。
また、残留塩素保持と言う考えはありません。
水道水が塩素臭いということはありません。
 2002年7月、ロンドンにいる親戚から新聞記事が届きました。
「英国の水道水はほぼ完璧な清澄度に達した。水道会社はボトル水に対抗すべきだ。
ボトルの水を買う必要はない。 ・・・・・ 売られているミネラルウォーターと
比べてもよりソフトでよりおいしい。値段も1万分の1と安い。ロンドンは緩速ろ
過、残留塩素という考えはない。」
 
 大人のアトピー患者は日本だけみたいです。
 塩素のせいかもしれません。慢性毒への体の反応なのかもしれません。
 
 
   (倶知安、京極の水のおいしいわけ)
 簡単に言うと、
山に水が降る −> 森の落ち葉を通過 −> 
微生物が水に混じった有機物をエサとして食べる −>
土の中を通過 −> 微生物が水に混じった有機物をエサとして食べる
−> AOCの低い水になる −> 伏流水、清水となる
 という原理です。
この自然の原理を真似たのが、緩速ろ過です。
 
 動いている水は、安全です。滞留している水は、そこにある土壌成分を取り込む
ので重金属を含むようになったり、硬水になったりします。
 動いていれば、不純物を含む機会が減少します。きれいな水でいられます。
 
 緩速ろ過は以前は国の補助金が出ませんでした。
私が緩速ろ過の宣伝を一人でしていましたたら、5,6年前から出るようになりま
した。
 
 
 
 茶色の水は北海道にたくさんあるが、飲用に駄目だと言われたことがあるが
本当に駄目なのか。透明度も高い。
 
 
 
 アイルランドでは緩速ろ過で茶色のまま水道水を140年間供給しているが
問題は発生していない。
 塩素を入れると問題(化学反応)が出てくる。
 生物処理でAOCを無くせば、茶色でも問題はない。
 微生物が利用できない有機物(微生物の体をそのまま通過)は、人間の体も
通過するので問題はない。
 ただ、塩素を入れると問題が出てくる。
 色は好みの問題。
 
 水質基準も16年4月から変わる。
 大腸菌群といって、常在菌も基準であったが、大腸菌だけになる。
 これからは、山の清水・湧水も飲用適になるケースが増えてくるだろう。
 
 基準は、都合によって作られることをおぼえておこう。
 行政は、基準がないと動けない。
 でも、基準は絶対的なものではない。
 
 
 不耕起栽培の水田で緩速ろ過をするという話も出ている。無農薬・完全に無化学
肥料だそうです。
 
 実は、緩速ろ過は日本にたくさんあります。
 簡易水道は緩速ろ過が主流です。
 100人以下なら水道法の基準に当てはまりませんので塩素はいりません。
 ただ、補助金をあてにしてはいけません。色々な規制にぶつかるからです。
 自分たちで簡易水道をつくること。
 
 倶知安なら水道特区(塩素無添加)をつくり宣伝してみるのもいい。 
 
 一番経費がかからず、塩素無添加で安全でおいしい水を作れる方法が自然の原理
を真似た緩速ろ過ということを一般の人たちに知ってほしいと思っています。
 
 
「原水は滅菌する必要はないが、水道管を通って各家庭の蛇口までの間で大腸菌など
が発生する可能性があるので塩素滅菌の必要がある」というのですが、
配水管のなかで大腸菌が発生するとなれば、それは配水管の構造が悪いということに
なるのでしょうか?
 
 
 水道管を通る間に、細菌が増えるかです。
 
それは、原水中に微生物が繁殖するための有機物がある場合です。
生物利用可能の有機物が無いと、微生物は繁殖しません。
それは、水道協会雑誌71巻11号(昨年の2003年11月号)p9の下の注を参
照してください。渡辺義公先生らの対談の中で書いてあります。
「浄水技術開発と水道の未来」(p2−15)という座談会です。塩素の問題につい
て、日本の水道の将来について考えさせられることが多い記事です。
 
急速ろ過では、浄化処理が不完全で、生物利用可能の有機物が残っているのです。
だから塩素を添加しないと微生物が繁殖します。
倶知安の場合、自然とゆっくりと微生物が働いた結果で、生物利用可能の有機物は
残っていません。
 
水道管に外から汚水が流入するか。
 
それは、水道管から水漏れはしますが、圧力があるので、水道管に外から汚水は入り
ません。
 
仮に、工事などで、水道管が濁っても、濁った水道水は住民はそのまま飲みません。
 
 
また、これまでの大腸菌群から大腸菌になります。
それも土壌由来で腸管由来のではないのがこれまでの検査方法で検出され、問題に
なっていた。WHOが変更したので、日本も変えました。
 
 
 
参 考
 
 新水質基準
(平成15年5月30日厚生労働省令第101号、平成16年4月1日から施行)
 46項目から50項目へと拡大。(13項目追加、9項目削除)
 
 大腸菌:検出されないこと(大腸菌群から変更)
 
 トリハロメタンや新たな消毒副生成物の問題、クリプトスポリジウムなどの耐塩
素性の微生物による感染症の問題、内分泌撹乱物質などの新しい化学物質の問題が
新たに浮上してきたこともあり改正となった。
 
 項     目       基       準    
1 一般細菌         100個/ml以下
2 大腸菌          検出されないこと (新規)(大腸菌群の代わり)
3 カドミウム及びその化合物 0.01mg/l以下
4 水銀及びその化合物    0.0005mg/l以下 
5 セレン及びその化合物   0.01mg/l以下
6 鉛及びその化合物     0.01mg/l以下 
7 ヒ素及びその化合物    0.01mg/l以下 
8 六価クロム化合物     0.05mg/l以下 
9 シアン化物イオン及び
 塩化シアン         0.01mg/l以下
10 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 10mg/l以下
11 フッ素及びその化合物   0.8mg/l以下 
12 ホウ素及びその化合物   1.0mg/l以下 (新規)
13 四塩化炭素        0.002mg/l以下
14 1,4-ジオキサン      0.05mg/l以下 (新規)
15 1,1-ジクロロエチレン   0.02mg/l以下
16 シス-1,2-ジクロロエチレン 0.04mg/l以下
17 ジクロロメタン      0.02mg/l以下
18 テトラクロロエチレン   0.01mg/l以下
19 トリクロロエチレン    0.03mg/l以下
20 ベンゼン         0.01mg/l以下
21 クロロ酢酸        0.02mg/l以下 (新規)
22 クロロホルム       0.06mg/l以下
23 ジクロロ酢酸       0.04mg/l以下 (新規)
24 ジブロモクロロメタン   0.1mg/l以下
25 臭素酸          0.01mg/l以下 (新規)
26 総トリハロメタン
(クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン、
ブロモホルムのそれぞれの濃度の総和) 0.1mg/l以下
27 トリクロロ酢酸      0.2mg/l以下 (新規)
28 ブロモジクロロメタン   0.03mg/l以下
29 ブロモホルム       0.09mg/l以下
30 ホルムアルデヒド     0.08mg/l以下 (新規)
31 亜鉛及びその化合物   1.0mg/l以下
32 アルミニウム及びその化合物 0.2mg/l以下 (新規)
33 鉄及びその化合物     0.3mg/l以下
34 銅及びその化合物     1.0mg/l以下
35 ナトリウム及びその化合物 200mg/l以下
36 マンガン及びその化合物   0.05mg/l以下
37 塩化物イオン       200mg/l以下
38 カルシウム、マグネシウム等
(硬度)           300mg/l以下
39 蒸発残留物         500mg/l以下
40 陰イオン界面活性剤     0.2mg/l以下
41 ジェオスミン        0.00001mg/l以下 (新規)
                H19.3.31までは既設水道で0.00002mg/l
42 2-メチルイソボルネオール 0.00001mg/l以下 (新規)
                H19.3.31までは既設水道で0.00002mg/l
43 非イオン界面活性剤     0.02mg/l以下 (新規)
44 フェノール類         0.005mg/l以下
45 有機物(全有機炭素の量) 5mg/l以下 (新規)
                (過マンガン酸カリウム消費量の代わり)
               H17.3.31までは過マンガン酸カリウム消費量
              10mg/l以下を適用可
46 pH値           5.8以上8.6以下
47 味              異常でないこと
48 臭気             異常でないこと
49 色度              5度以下
50 濁度              2度以下
 
 
 
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     おいしい水は どんな水?
 
簡単に、飲みたくなる水道水ができる?
 
信州大学繊維学部応用生物科学科 中本信忠
 
2003.3.21.第3回子ども環境学会
子どもと大人の国際シンポジウム 代々木オリンピックセンター
 
1 生でおいしい水道水について
 昔は、水道水をそのまま飲んでいました。
しかし、いつのまにか、水道の蛇口からの水を直接に飲むということが少なくなって
しまいました。
どうしてペットボトルの水を好んで飲むようになったのでしょうか。
その水は、山の清水を瓶に詰めただけです。
戦後、薬品処理の急速ろ過処理が最新技術で良いと誤解し、塩素臭い水道水が供給され
るようになってから臭い水問題が生じました。
水の安全性に不安になったからです。
 
昔の水道水は、ゆっくりと砂層を通過させる緩速ろ過処理という方法で、良質の水道水
がつくられていました。
河原でみられる清澄な湧き水を人工的につくろうとして開発されました。
薬品を使わず、自然の仕組みの上手な利用でした。
ゆっくりと時間をかけ、生物群集が活躍して病原菌もなく、安全でおいしい水道水が
できるのです。
「生でおいしい水道水」をつくるナチュラルフィルターによる緩速ろ過技術を再認識
しましょう。
 
2 金魚が死ぬ水、実験動物が飲まない水
 塩素の臭いがする水道水で金魚が飼おうとしたら、金魚は死んでしまいます。
イルカやペンギンの水槽の水は、見た目には、きれいです。
それは塩素入りの水です。
イルカやペンギンは肺呼吸をする動物、でも金魚は鰓呼吸をします。
つまり、塩素臭い水を身体にいれると金魚は死んでしまうので、塩素を入れることは
できません。
実験動物のネズミやウサギは塩素臭い水道水を決して飲みません。
でも人間は、塩素臭い水を安全だと教育されて飲んでいます。
 
3 強い水泳選手は茶髪になる
 中学や高校で強い水泳選手は自然と茶髪になるのは常識です。
殺菌消毒用に添加する塩素で、髪の毛は自然と脱色してしまいます。
水泳プールの塩素と水道用の塩素は同じもので、さらし粉や次亜塩素酸ソーダでです。
家庭用の消毒や脱色剤のブリーチなどといわれる液体の主成分と同じものです。
濃度が薄いから安全だといわれています。
この塩素臭い水は、健康に良いはずがありません。
 
私たちは、この塩素臭い水道水に対して、動物的本能で飲みたくないと反応したのでは
ないか。
それは、正解かも知れません。
 
戦前の日本では、塩素臭い水道水はほとんどありませんでした。
それは、英国生まれのナチュラルフィルターによる緩速ろ過技術で、安全でおいしい
水道水をつくっていたからです。
この水道水のつくり方を、再評価し、再認識したいです。
 
4 ガソリンより高い水はおかしい
 私の研究室にブラジルから研究者が滞在しました。
学生がペットボトルの水を飲んでいるのを見て、「日本では水道水は飲めないのか?」
と質問されました。
「日本の水道水は殺菌消毒され、安全で、どの水道の蛇口でも飲める」と答えました。
「なぜ安全な水道水があるのにペットボトルの水を買うのか。お金が余っているとしか
思えない」と言われてしまいました。
 
井戸水や伏流水を塩素消毒だけして給水している水道水はおいしい。
次は生物処理の緩速ろ過処理の水道水です。
自然界の仕組みを上手に活用した緩速ろ過処理による浄水場は、五十年でも百年でも
安くおいしい水道水を供給し続けています。
 
飲みたくない水道水は、薬品処理の急速ろ過による水である。
高いお金をかけても塩素臭い水道水は信用されません。
ガソリンより高いペットボトル入りの水を容認している日本社会は、おかしいと思い
ませんか。
 
欧米では安全な水道水ということで、現代に通用する古い技術の緩速ろ過の見直しが
始まっています。
(この内容は、2000.6.2.朝日新聞「声」欄に投稿し掲載されました)
 
5 砒素汚染井戸水問題
 バングラデシュは 1971 年に 東パキスタンから独立した国です。
インドの東、ガンジス川の河口のデルタ地帯に発達した国です。
1971 年の独立直後から、下痢、コレラ、赤痢などの水系伝染病対策の一環として
各援助機関の支援(ユニセフなど)で飲用井戸(手押しポンプ井戸)の普及を促進して
きました。
その数は、現在 1200 万本ともいわれています。
同国64 中 61 県の井戸において 15 年位前に砒素汚染が顕在化し、大問題になって
います。
 
 WHO の砒素の水質基準ガイドライン値基準ガイドライン値(0.01mg/l)に当て
はめた場合、総人口の約 5 割に当たる 6,000 万人が影響を受けていると考えられて
います。
WHO の基準をそのまま当てはめると使えない井戸水が増えてしまうので、現在の
バングラデッシュの基準は 0.05mg/l にしています。
また、バングラデシュ政府の公式発表においては慢性のヒ素中毒患者が 1 万 554 人
にも及んでおり大変深刻な状況となっています。
 
病原菌に汚染されていない安全な飲み水として勧められてきた井戸水が砒素に汚染され
ていたのです。
低濃度でも長期間にわたって飲用したので、中毒症状がでてきました。
 
手押しポンプ井戸がなかった独立前は、掘り抜き井戸、池の水、川の水を利用していま
した。
これらの水は、砒素にほとんど汚染されていなかったのです。
しかし病原菌に汚染されていました。
 
そこで、砒素に汚染されていない池の水、掘りぬき井戸の水を原水として緩速ろ過処理
をしようと考えました。
しかし、緩速ろ過処理の原理を理解していないので、設計、維持管理が悪かったよう
です。
その結果、廃棄された緩速ろ過施設でてきました。
宮崎大学で砒素による鉱毒問題を取り組んでいたグループがありました。
日本だけでなく、同じ問題があるのではと気づき世界にも目を向けました。
アジア砒素ネットワークを設立し、バングラデッシュでの砒素汚染問題に取り組みだし
ました。
緩速ろ過処理を進めようとしましたがよくわかりませんでした。
 
そこで、私が緩速ろ過処理に関して第一人者であることに気づき私にバングラデッシュ
に行って見てくれと懇請されました。
宮崎での会議(2002 年 10 月12 日と 13 日)およびバングラデッシュで現地を視察
し(2002 年 12 月 30 日から 2003 年1月5日)、いろいろ助言をしてきました。
 
砒素汚染地帯は、ガンジス河口のデルタ地帯でした。
地下 10m位にある帯水層が汚染されていました。
昔のマングローブ林地帯が埋没したところでした。
その層にある水が問題でした。
その水が少し酸素不足で、還元的で、砒素に汚染されていました。
この水を酸素が十分ある状態で緩速ろ過処理をすれば砒素が低減するのでした。
単に、酸化処理をすればよかったのです。
そこで、廉価にできる緩速ろ過処理の方法についてノウハウを伝授してきました。
 
この地下水汚染と同じ現象は、世界各国で見つかります。
地下水は決して、安全とは言えません。
酸素不足の水が問題です。
 
自然界の動物は、安全な飲み水は、どんな水かを良く知っています。
また、私たちも昔から、生活の知恵で安全な水を探して利用してきました。
また安全な見るの作り方を工夫してきました。
決して新しい技術は全てに当てはまるとは限りません。
 
6 スローがキーワード
 戦後の高度成長時代は、何でも、早いのは良いとされました。
即決、即実行、早く結果をだす。
遅れるのは、その人が悪いとされました。
その結果、戦後、もの凄い勢いで日本は復興しました。
アメリカの物、アメリカ式は全て良いとされました。
大量生産、大量消費、それに大量に廃棄物を出し、川や湖に垂れ流しをしました。
しかし、自然界での浄化力以上の負荷を与え、臭い水問題に代表される公害問題が生じ
たのです。
 
その対策に、莫大なお金をかけ、浄化機器と薬品をかけざるを得なくなり、景気が悪く
なりました。
新にお金を投資するのが大変になりました。
そこで、少しは時間がかかっても、自然の仕組みの上手な利用で、環境回復をしようと
考え、環境負荷も少なくしようと考えました。
 
食べ物もそうです。
ファーストフードでなくスローフードが注目されだしました。
インスタントでなく本物を求めるようになってきたようです。
 
7 欧州での水道水の信頼性回復
 「塩素のリスクとベネフィットを考える」(真柄泰基、水環境学会誌 25(8):27-29,
2002)の論文を紹介したい。
その中に次のような事が書かれてありました。
 
コレラが防げ、衛生的に安全な水確保に緩速ろ過は有効であるのが約 100 年前に明白
になった。
一般細菌が 1ml 中に 100 個を越えるとコレラの発症率が高まることもわかった。
ゼロでなくリスクで判断した。
現在の日本もこの基準を踏襲している。
戦後,米軍の指導で塩素強化、残留塩素保持へ指導された。
塩素処理で発ガン物質生成、塩素で死なないクリプト原虫による集団下痢の発生。
欧州諸国では残留塩素保持を義務つけていなかった。
塩素処理をしてない事業体も多い。
塩素臭を給水栓で感知されることは水道利用者から苦情が、水道の信頼性を低下させる
と考えている。
塩素の使用を行なわない、塩素臭を感知しない水道水が多くなり、信頼性が回復し、
テーブルウオーターとして水道水が使われるようになった。
 
8 膜は溶解性成分を除けない
 塩素で死なない原虫騒ぎで、塩素消毒に代わる処理を真剣に考えている。
現在の日本では、安全な水をつくるために、腎臓透析膜みたいのを使おうではないかと
いうことが言われれています。
「浄水技術開発と水道の未来」(渡辺義公北大教授ほか:水道協会雑誌、71(11):2-15,
2002)の論文中に次のような事が書かれていました。
 
膜はアンモニアや溶存有機物などの溶解成分は抜ける。
AOC (Assimilable Organic Carbon:同化可能有機物:生物により分解可能有機物)が
少なければ、微生物は繁殖しない。(戦前の水道水を外国船が船倉に貯水し赤道を
通過しても腐らなかった。緩速ろ過処理では徹底的に微生物により分解されるので
AOC はほとんどなくなる。)
 
オランダのライン川の汚濁した水を徹底的に分解すれば、最後に塩素を入れる必要
がない。
会議にペットボトルが出てこない。
水差しに入れた水道水がでる。
スーパーにペットボトルなんか売っていない。
ガソリンより高いペットボトルが売れる日本はおかしい。
 
Tap v Cap (The Times 2002.7.10.)の戦い
Forget the bottle, for purest water turn on the tap
ボトルは必要ない。
最純水の水が必要なら水道水がある。
水道水とボトルの戦い。
英国の水道水はほぼ完璧な清澄度に達したので水道会社はボトル水と対抗すべきだ。
水道会社名入りの空瓶を配り、水道水を入れ冷蔵庫で冷して飲んでもらおう。
冷やして飲めば、ボトルの水と比べ、よりソフトで、よりおいしい。
値段も 1 万分の1と安い。
塩素臭くない水道水だから、このような主張が新聞に掲載されていた。
 
ロンドンは 100%緩速ろ過処理の水道水だし、残留塩素保持という考えがないので、
塩素臭くない。
 
9 塩素を使わない水道があってもいい
 2002.10.31.産経新聞「水再考」:国立保健医療科学院の国包章一水道工学部長が
「塩素を使わない水道があってもいい」、
「一律に残留塩素がなくてはならないとはどうか」、
「コストと安全のバランスは利用者が決める問題では」と発言しました。
 
浄水場で飲用可として十分なら、給水栓での残留塩素保持という考えを改めたいとの
意向であろうか。
急速ろ過処理は、クリプト対策でダメ、最後に塩素を添加してもダメ。
塩素は発ガン物質をつくる。
膜でも溶解性物質はダメ。
それなら、生物処理の緩速ろ過しかない。
 
日本の水道界をリードしてきた研究技術者が、これまでの主張と 180 度違って、
本当の事を言いだしたようです。
塩素づけの水道から脱却できるか、いづれにしても水道が変わりそう。
 
10 .緩速ろ過処理の始まり
 繊維産業には、染色した後は余分の染料を洗い流す必要がある。
脱色過程では良質で大量の水が必要です。
そこで、河床に湧いている水が清澄で良質なのに気づき、河床の伏流水を人工的に
つくる方法を考えた人がいました。
1804 年に英国スコットランドのグラスゴー郊外ペーズリーで、繊維材料の脱色をして
いたジョン・ギブです。
 
川の水を砂利の槽と砂の槽をゆっくりと横に流して通過させ、清澄な水を造った。
その水は、自分の工場で使っても大量に余り、ペーズリー市全域に、ワイン樽に詰めて
売り歩いた。
これが公共水道事業の起源と言われ、ペーズリーろ過方式として英国中で評判になっ
た。
 
産業革命時代の英国は都市に人口が集中し、下水でテムズ川が汚染され、悪臭でひどく
なりました。
ロンドンのテムズ川の水もモンスター(怪物)スープと言われる状態でした。
この汚い河川水をバッキンガム宮殿などに給水していたチェルシー水道に24 歳で就職
したジェームズ・シンプソンは、会社に内緒で水質浄化実験をしましたが、直ぐに会社
から認められ、大がかりな実験をしました。
 
1827 年、28 歳のとき、マンチェスター、グラスゴーを初め、英国中を
「2,000-mile inspection trip of the quest for pure water(清澄な水を求め 2,000マイルの
旅)」をしました。
1829 年1月 14 日、30歳のとき、現在とほとんど変わらない緩速砂ろ過処理方式
(slow sand filtration)を完成させました。
原水を上から下にろ過をし、砂層に詰まる汚泥を表面の汚泥を削り取る方法を考えまし
た。
当時は濁り水をゆっくりと砂ろ過処理すれば濁り粒子が除去できる篩いろ過と単純に
考えました。
しかし、この処理は生物が主役で活躍して水質を浄化しているのが後にわかりました。
 
11 コレラ流行と緩速ろ過処理
 ジェームズ・ワットは効率的な蒸気機関を発明し産業革命が進みました。
その結果、都市に人口が集中しました。
世界貿易が盛んになりコレラが世界中で大流行しました。
ドイツのロバート・コッホが1882 年に結核菌を発見し、翌 1883 年にはコレラ菌を
発見しました。
江戸末期から明治の初めは、細菌学、病理学が発達した時代でした。
ロンドンやドイツのハンブルグ(1892:明治 25 年)で緩速砂ろ過処理をして給水して
いる地域でコレラ患者の発生が少ないことが評判になりました。
 
緩速砂ろ過処理をすると病原菌が除けることがわかった。
病理学が発達し、砂層内の微小動物が活躍して病原菌が除けることがわかり、緩速砂ろ
過処理は、生物処理であると認識された。
「細菌学的に安全な飲み水供給は緩速砂ろ過処理による English Filter 英国式ろ過」と
して絶大な信頼を得て世界各地に普及しだしました。
 
12 緩速砂ろ過処理は生物処理
 山の清水はどうして清澄でおいしいのか、それはあらゆる生物が活躍して水質浄化
をしているからです。
河川には、周囲から落ち葉などが流入し、底に沈みます。
その下には水生昆虫などが生息しています。
砂礫の間にも水生昆虫の幼虫やその他の小動物が生息しています。
上から流れてきた落ち葉などの屑を食べてこれらの小動物は繁殖します。
砂礫層の中、餌がない深いところには動物の餌は浸入しません。
深いところに微小動物もほとんどいません。
 
微小動物や微生物により分解や消化できない物質は、生物と何も反応しません。
人間の腸管に入っても単に通過するだけです。
生物によって分解されたものは、人間も反応しない安定した物質です。
緩速砂ろ過処理では、あらゆる微小生物や微生物が十分に活躍できる環境です。
 
13 .流れと生物の形
 湖沼には植物プランクトンという光のエネルギーを使って繁殖する小さな生物が
います。
表層に浮いているので浮遊生物といわれます。
その形態をはっきりと見るには、普通は顕微鏡でないとわかりません。
自分では運動するための器官などはなく単細胞の生物が多いです。
ダム湖で河川水が流入するような場所は非常にゆっくりとした遅い流れがあります。
このような場所には、鞭毛藻類といわれる植物プランクトンがいます。
 
それは、運動するために鞭毛を持っているので、その生物にとって都合が良いところに
移動できるからです。
しかし、湖沼で見られるような運動能力がない浮遊性の生物は流されるので生息できま
せん。
 
緩速砂ろ過池は上から下への流れが常にあります。
その流れの速度は、1時間に約 20 センチと非常に遅い。
遅い流れと言っても運動能力のないプランクトンは流されて生息できません。
このような環境では、糸状形態で縦に長く伸びる藻類のみが繁殖できます。
緩速砂ろ過池の水深は約1メートルで、光が底まで届きます。
底の砂層の上には、真綿状に繁殖する糸状藻類被膜が発達します。
水は真綿状の藻類被膜の中を通過します。
ゆっくりとした流れがある環境では、糸状形態の生物しか繁殖できません。
 
ろ過池よりも、もっと流れが速い自然環境は、河川です。
河川の河床には礫があり、礫面に堅固に付着して生活する付着藻類が発達します。
 
自然界の生物は、光と栄養があれば、その環境に適した生物が、繁殖するのが普通
です。
生物は光や栄養を無駄にしないのが自然界で活躍する生物です。
 
14 スローとは繊毛虫が流されない速度
 緩速ろ過処理での標準ろ過速度は、1日に4から5mといわれています。
この速度は英国での標準ろ過速度の1日に 4.8mと同じです。
1日に 4.8m、1時間に 20cm、1分に 3.33mm、1秒間に 55μm(ミクロメーター)
です。
繊毛虫の大きさは、50 から 200μm が多いです。
つまり、水中で動き回る繊毛虫がこの流速では容易に動き回れる速度です。
スロー、ゆっくりの速度というのは、水中で動き回り、細菌などを捕食する微小生物が
流されない速度でした。 1
 
15 藻は光合成により良好な環境をつくる
 光と栄養と水があるところでは、光合成を行う植物が繁殖します。
光合成は炭酸ガスと水とで有機物を合成し、酸素を放出します。
 
盛んに光合成し藻類が増えることは酸素を大量に生産することです。
この酸素は水中に溶け、酸素豊富な環境にします。
水中の酸素は溶けきれず過飽和状態になり、酸素の気泡が砂層表面や藻類被膜中に生じ
ます。
この気泡の浮力で砂層表面の藻類被膜は剥離浮上し、水面に漂います。
ろ過池には、この浮上した藻が越流管から流出する構造があります。
水面に藻が汚らしく漂っている様子は、見た目に非常に悪いようです。
しかし、酸素が豊富な環境は微生物や微小動物が活躍しやすくなります。
一方、光がない夜は呼吸で酸素を消費します。
しかし、生じた気泡は夜間もそのままでした。
夜間は、気泡から酸素を水中に付与する役割もしていました。
また、生物は増えすぎると分解をし、酸素を大量に消費します。
越流管が正常に機能していると、藻が盛んに繁殖し、水面に浮き、越流管から自動的に
排出され、酸素消費をするもの自体が少なくなります。
 
どうも、見た目で判断してはいけないようです。
自然の仕組みを理解して、生でおいしい水道水を飲めるようにしたいです。
詳しくは、「生でおいしい水道水」築地書館の本を見て下さい。
 
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2004年6月16日(水)
長野県土木振興会総会で、「安全でおいしい水道水の再認識」土木会社も緩速ろ過を
考え出した。急速ろ過処理にするとお金が都会の業者に流れ、言いなりになり、水道
料金は高くなる。緩速ろ過処理なら、地元の業者が自分らで維持管理ができ、水道料
金も安くなる。安全で、安心でき、おいしい水道水を供給できる。自己責任で、緩速
ろ過処理でろ過し、塩素を添加する前の「本当においしい生の水」を試飲してもらい
ました。
 
2004年7月12日(月)
宮城県刈田郡七ヶ宿町、覆い緩速ろ過による浄水場の維持管理について実務者に対し
て指導助言をしまた。
問い合わせ先:七ヶ宿町役場建設課:tel:0224-37-2115。
この町の緩速ろ過で濁度や色度がとれないとのことでした。
5月に下見に行ったところ、浅い伏流水を取水していたが、濁りがでる。
見学したところろ過した後、配水池が一杯になると、ろ過を止めてしまった。
そのために、細かな濁りが、砂層深くまで侵入し、ろ過池から漏出する。
ろ過継続は3ヶ月から4ヶ月続けているが、汚れた砂層は10cmも削り取るとの
こと。常に一方通行の流れがあるなら、細かな濁りは深く入らない。
削り取りもほんの僅かのはず。
河床に埋設した集水埋渠で取水するが、濁りがあった。ろ過池がろ過閉塞すると、
水が張ったまま砂層表面を針金の熊手でかき混ぜてしまっていたので、濁りが漏出
したことがわかった。
緩速ろ過とは「単にゆっくりろ過すれば良い」と考えた。
説明をしたところ、「これまでの考えは全く違い、生物処理なのだ」と理解してく
れた。70ページ以上もするわかりやすい解説資料を作成し差し上げた。無償で差
し上げたが、どこかで、印刷し、販売してくれるところがないかな。
 
2004年7月17-18日、
信州環境フェアー(長野ビックハット)で「おいしい水を求めて:緩速ろ過の解説
・展示」をします。
長野市は大正から現在まで、現役で活躍している往生地浄水場があります。
貯水池の水を緩速ろ過でおいしい水を長野市民に供給しています。
ローテクですから、故障もしませんし、自分らで維持管理ができます。
地元に有利な浄水場です。
夏目ヶ原浄水場も昭和の初めに犀川の伏流水を取水して緩速ろ過処理をしていまし
た。
東京オリンピックの頃、ろ過池で繁殖する藻が悪いと誤解して、急速ろ過処理に変
更しました。
伏流水ですから、既に、緩速ろ過処理された水ですからおいしい水を供給していま
した。
しかし、裾花ダムができてその水を急速ろ過処理をし、臭い水を供給するようにな
りました。
急速ろ過処理では臭いを除けないという欠点があります。
また、凝集剤を添加しますので、汚泥という産業廃棄物が大量にでます。
それは、犀川浄水場に運んで処理しています。
急速ろ過処理は発ガン物質をつくり、クリプト原虫を通過させるということがわか
り、欠陥処理なのです。
急速ろ過処理は事故だらけで、問題が多いので、大企業のコンサルと相談しないと
解決できません。
自治体職員では解決できないのです。
企業の利益追求の水道業界の言いなりになります。
消費者不在の水道になります。
塩素臭くない水道水は生物処理が最良。
ローテクだがハイテクの社会にも通用する。
再認識し、皆が声をだすこと。
ハガキで報道機関に「生でおいしい水道水」を取り上げてと出そう。
ハガキは無視されないで回覧されます。
厚生労働省・自治体の水道課に「緩速ろ過処理を見直して」とハガキを出そう。
ペットボトルを容認している水道局はおかしいと思いませんか。
明治時代に建設した緩速ろ過池が現役で問題なく稼働しているのに、戦後建設した
急速ろ過処理は問題だらけです。
欠陥処理です。
 
2004年8月22日(日)午後2時から、中野市中央公民館、
「生でおいしい水道水」は飲めるようになる。
中野市は昭和2年に緩速ろ過による浄水場ができ、昭和39年にも増設しました。
しかし、昭和42年に急速ろ過処理に変更しました。
日本中で急速ろ過処理に変更した時期です。
緩速ろ過池で藻が繁殖するので、殺藻処理をしたのでしょう。
緩速ろ過は無理と考え、薬品処理に変更しました。
急速ろ過処理は欠陥処理であるのが明白になり、市民が緩速ろ過処理に戻せないか
と勉強会を企画し、本年も再度、勉強会をします。
関心がある方は参加してください。
連絡先:中野市環境問題を考える会:tel:0269-23-0124小林優子さん。